第9回西洋料理分科会より  
 
 
     
   


新鮮な根野菜のスープ









 今回の大阪会場は、東京・台場にある「ホテル・グランパシフィック・メリディアン」元取締役総料理長の岩月明シェフにお願いした。岩月シェフは昨年6月にホテルを退任されましたが、長く「健康とフランス料理」をテーマに仕事をしてこられました。講習の冒頭、先生からこんな前置きがありました。今回ここでする料理は決して病人食でもなければ糖尿病食でもない。だがフランス料理のコースを食べれば、それだけで2000〜2500カロリーは摂取してしまう。これをやはり気にされるお客さまもいるはずである。

 カロリーを押さえられるところは押さえてつくれないかと思い、長く管理栄養士の先生といっしょに研究、実験をしてきた。その結果、塩分、脂質、糖質を押さえることでそのカロリーを軽減することができた。たとえば肉を焼くときもフライパンで焼くよりも網を重ねたもので焼き、遠赤外線の効果を生かし脂をできるだけ排除する。魚などは焼いたあとぬるま湯にくぐらせて脂を流し落とす工夫をする。また肉、魚などを調理する前に直接塩をするが、これが結構多すぎる。

 人の1日に摂取すべき塩分は8g。これをどう解消するかという点は塩4gを水で溶かし、これを材料に刷毛で塗る方法で解消できるのである。確かに、直接塩をしたのと味的には変わらないのである。したがって我々が塩をしている量が多いことは証明された。この点は受講生も驚きであった。塩をするという行為は調理において素材の味を引き出す上で不可欠なものである。だが、何に対して、だれに対して適量というのかという疑問の投げかけに今回の岩月先生の講習の意義があったのではないか。


鮎の炙り焼き
サラダ仕立て、
バルサミコソース


茄子のコンポート
グレナデン風味
 
 


 

 

 

 

 



ペルノー酒風味の
メロンの ジュレ
きゅうりのソース

 東京会場は「ミストラル」会長で東京・恵比寿のレストラン「イレール」のオーナーシェフである島田哲也シェフをお招きし、シェフの料理観や経営についてうかがい、興味深い講習となった。島田シェフは今回の講習のためにエイの赤ワイン煮を用意された。そこに料理観を読み取ることができた。エイという魚は火を通すとパサパサになりやすい、といって赤ワインの香りを十分につけないと独特な匂いは押さえられない。そのため、赤ワインだけでまず煮て、そのワインの香りをつけてからさっと煮込む。さらに、ソースは濃厚なものにするといった具合に仕上げることが大切なポイントと説明されていた。基本を踏まえた上で斬新な形を目指して料理に取り組むことの大切さも、島田シェフのお話の中から読み取れた。

 そのために業態の違ったレストランを3軒持ち、それぞれのレストランでのメニューを展開されている。

エイのムニエル、
赤ワインソース

子うさぎのバロティーヌ、
クリームチーズのムース添え
赤ピーマンの香り