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「コーヒーとお菓子」という視点から、 コーヒーについて考えてみたい。 と、いっても、 基本的なことはおさえておいていただきたいので、 まず、今回と次回でコーヒーの品質について、 その後、焙煎とコーヒーの味創り、コーヒーの抽出の基礎、エスプレッソ、コーヒーとお菓子と進めてゆこうと思う。 |
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「コーヒーの品質」というテーマに入る前に、栽培から抽出液に至るまでのコーヒーの加工プロセスを確認しておこう。 (1)栽培→(2)収穫(果実)→(3)精製(生豆)→(4)格付け→[輸出]→(5)焙煎(加熱加工。焙煎豆)→(6)ブレンド→(7)粉砕(コーヒー粉)→(8)抽出(コーヒー液) ふつう、コーヒーを提供する店では、(5)(6)の焙煎豆か(7)の粉で仕入れているはずである。だから、店にとっては焙煎豆、あるいは粉が「材料」ということになる。この材料を仕入れ、そして、抽出で腕をふるってコーヒーを客に提供、これが一般的なスタイルである。 材料=焙煎豆(粉)、技術=抽出技術、この見方は誤りとはいえないが、焙煎豆自体が「調理済食材」に近い加工度なので、抽出技術のコーヒー液に果たす役割は、きわめて限定されている。焙煎=調理、抽出=盛り付け、これも少し極端な見解かもしれないが、こちらの方が事実に近い。 焙煎を調理に、抽出を盛り付けになぞらえる、この考え方を敷衍していくと、8つのコーヒーの加工プロセスは、役割別に3つのグループにまとめることができる。まず、(1)〜(4)の生産国での加工プロセス。この段階で材料としてのコーヒーの品質がほぼ確定する。(5)(6)の加熱加工(焙煎=調理)とブレンドはコーヒーの味の性質を決める。そして(7)(8)はコーヒーの細部の仕上げのプロセス。 長々と加工プロセスの説明をしたが、「コーヒーの品質」といえば、当然のことながら最終の「抽出液の良し悪し」が問われるわけだが、(1)〜(8)の手順を踏まないと「抽出液の品質」を正確には把握できない。コーヒーとは結構面倒な飲み物なのだ。 |
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インドネシア・マンデリン(生豆、アラビカ) インドネシアの名産地のコーヒー |
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ケニアAA(生豆、アラビカ) ヨーロッパで評価が高い。エスプレッソ向き |
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現在、商業的に栽培されているコーヒー種は、アラビカとロブスタ(厳密にはカネフォーラ種の品種)の2つの種(しゅ)がある。種が違うのだから味も香りも形もかなり異なる。そして、アラビカはロブスタよりも高級、これがコーヒー評価の基本原則だ。 ロブスタの主な特徴をあげてみよう。 形状:アラビカに比べてふっくらして丸みを帯びている(写真参照)。 |
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ロブスタ焙煎豆。インドネシアWIB |
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ロブスタ生豆。ロブスタの中でも低級品 |
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香り:煎り麦のような香り(インスタントコーヒーの煎り麦臭)。 味:酸味がほとんどなく、コクがある。 値段:安価 このほかに、味・香りの経時変化が少ない(このためもあってインスタントコーヒーに多用)、カフェインの含有量が多い(アラビカのほぼ倍)などの特徴がある。 ロブスタは低級品と見なされているので、単独の商品として出回ることはほとんどなく、アラビカにブレンドして使用される。ロブスタがブレンドに使われる理由は主に次の3つ。味の補正(酸味を和らげコクを加える)か、値段の補正(値段を下げる)か、その両方か。皮肉な表現になったが、ロブスタを使用するかどうかは、店にとっては重い決断である。エスプレッソの場合には味の補正用として効果的だが、ロブスタ臭の目立たない程度にとどめるべきだろう。 じつは、ロブスタと最高級のアラビカを予断なしに飲み比べたら、ロブスタに手をあげる人も少なくないと思う。だがラフィットのようなワインと安酒のモニタリングをしても、安酒に一票入れる人も多いはずだ。個人の感覚を優先させるより、既存の価値基準を身につける、コーヒーもそんなジャンルである。 次回は、主にアラビカの産地と欠点豆について取り上げたい。 〈辻静雄料理教育研究所 山内 秀文〉 |