第10回西洋料理分科会より  
 
 
     
   


本まぐろの軽いスモーク
温度卵とボッタルガ添え


 現在3店舗を有し、今年更に1店舗を開店させた山根氏を迎えて、「店のコンセプト作りと最適調理」をテーマにご講義をお願いした。

 いまや、大阪のイタリア料理を代表する人気店を作り続けている山根氏。3店舗合わせて毎日1000人の客の対応をする大型店舗である。日本人が持つ味覚とイタリア食材の持つ味を比較しながらの講義には、受講者も興味津々だった。

 イタリア料理において、日本料理の昆布、かつおの旨みに匹敵するのが生ハムやパルメザン・チーズであり、これらハムやチーズの旨みを生かすことによってご自身の料理の幅が広がったことを特に強調されていた。そしてもう一つ、「最適調理」という山根氏の言葉も印象的であった。

 それぞれの食材にとってどの調理法が最もその旨みを引き出せるのかを考えて調理する。たとえば野菜はゆでるよりも蒸した方が栄養分が留まりやすく、味も凝縮されて濃くなる。肉も場合によっては強い火で焼くよりも、スチームコンベクションで低温調理した方が旨みが残りやすいものもある。このようにその素材にとってベストな調理が「最適調理」ではないかと山根氏は考えている。

 また、経営についても多くの話を伺うことが出来た。特に3号店の話には興味を引かれた。1日平均500食は出るこの店舗では、ランチ時の客が非常に多い。パスタランチを出しているが、パスタをゆでる8、9分が追いついていかない。そこで考えたのが生麺の導入だった。生麺は作るのに手間と時間がかかるので敬遠されがちであるが、ゆでる時間は乾麺に比べると確かに早く、しかも手作り感がある。ここに着目した山根氏は、「ポンテベッキオ」の製法によるパスタを外注した。この生麺を使うことで、客の回転数を上げながら、料理の質を変えることなく、手作り感と高級感を提供できたことが今日の集客数につながっていると説明されていた。


春のスープ 生ハム添え


すずきとフィノッキオの
紙包み焼き
オレンジ・バター添え
 
 


 

 

 

 

 



若鶏胸肉の
スモークサーモン詰め
キャビア添え
きゅうりのクリームソース

 東京会場では、大渕氏による料理講習が和やかな雰囲気の中で行われ、氏の技術や料理観などが織り込まれた授業になった。受講者はその調理技術に感動した。料理講習終了後は受講者たちが氏を囲み、時間ぎりぎりまで質問が途絶えることがなかった。

 質問攻めにも笑顔で丁寧に答えておられる大渕氏に、熟達した料理人の姿を見たような講習会であった。

子牛胸腺とモリーユ茸の
ソテー
   じゃがいもの
クリスティアン添え

はまぐりの軽い煮込み
香草ソース