第6回西洋料理分科会より  
 
 
     
  今回は、30数店舗を切り盛りするオーナーシェフと、一軒の店を守り続けるオーナーシェフという相反する立場のおふたりから、それぞれの考え方をお話しいただきました。


 
 

 


 


小穴子のフリット 
野菜たっぷりトマト酢
・ソース

 無国籍料理をやろうと思ったのは神奈川県葉山で「ラ・マーレ・ド・チャヤ」のシェフをしていた頃、料理指導で台湾に行ったときに味わった挫折感が始まりでした。そのころ台湾で手に入る材料は日本のものと異なり、特にフランス料理の材料はまったくと言っていいほど違っていて、その中では満足するものを何一つ作れませんでした。
 そこで、今までのフランス料理とは違った料理、「固定観念にとらわれない最強の洋食」を作ろうと思ったのがきっかけでした。ただし、無国籍といっても何でもありではなく、「パンとワインに合う」というのを大前提に考えてきました。 
 そしてさらに「おいしく、安全でヘルシー」な料理。こうしたキハチの料理は今後さらに需要が増すでしょう。あと数年もすれば4人に1人が60歳以上の時代が来ます。彼らは時間的にも経済的にも余裕があり、あちこち食べ歩いている方も多いことでしょう。そういう方がレストランに何を求め、どういう料理が食べたいか。そこにキハチの「おいしく、安全でヘルシー」というポリシーは生きてくるはずです。
 私が「ラ・マーレ・ド・チャヤ」を退職し、経営者として独立をした理由は3つあります。1つは人間の食の原点である食材の安全性の大切さを考えたからです。2つ目は経営のわかる料理人、ウェイターを育てられる会社を作りたかったこと。3つ目は私欲ではなく人を育てることの大切さを感じて、フード業界に精通するスタッフを育てたいと強く思ったからです。経営で大切なのはカ行、つまり感性、緊張感、苦闘、決断、そして行動です。この5つをよく頭に置いて自分を鍛えてください。ただ頑張るにしても、どういう目標に向かってどう頑張ればいいのか、そのビジョンを示すことができなければダメです。経営は抽象論では絶対にうまくいかないものです。


新鮮な若鶏のささ身の
わさび風味皿焼


仔羊となすのカルパッチョ
     
 
 
     
   


甘鯛のソテー春野菜の
リゾット添え

 

 

 


 社会の経済状況は最近厳しいものがありますが、中でも、衣・食・住には景気の影響は如実に現れてきます。高級なもの、必要でないもの、贅沢なものは削りとられるわけです。この社会状況を考えつつ、もう一度自分のやりたい店とは何かということを考えました。 
 料理人はおいしいものを作って、お客様からおいしかったと言われることが最終の目的だと思います。その考えから、店は多店舗経営ではなく1軒にして、いつも自分が料理を作ってお客様に提供できる店づくりを目指して行きたいというのが、最近の私の考え方です。
 しかし、その一方で私が若い料理人に言いたいことは、若い間にいろいろな店で働いた方がいいということです。ひとつの形にとらわれずに、たくさんのやり方を経験すること。その中から自分自身で何がやりたいかを見つけだすことが大切だと思っています。

ペンネの白いんげん豆と
春野菜風味