第8回西洋料理分科会より  
 
 
     
   
 


 菊地シェフは北海道出身、辻調の26期生である。
卒業後、東京「オー・シザーブル」、
「クラブNYX」などを経て、1986年に渡仏、
「オステルリー・ラ・プラルド」、
「ル・ジャルダン・デ・サンス」などで3年間研修。
さらにイタリア・フィレンツェ
「エノテーカ・ピンキオーリ」でも研修を積み、帰国。
東京「アンフォール」で3年間料理長として活躍された後、
2000年に現在の「ル・ブルギニオン」を32歳で独立開店。

 


冷たい玉ねぎのスープ、
鮮魚のタルタルマスタード
風味

 

 

 

 

 

 

 今回の講習は終始、菊地シェフの人柄の良さがにじみ出るような和やかな雰囲気の中で行われた。料理を始めても必要以上にしゃべらない、寡黙に仕事をするといったスタートになった。しかし、料理を次々に作っていき、材料について話を始められるとやはりそこは料理人。自分の料理観、材料に対しての思い入れなどを語っていただきながらの講習になった。たとえばデザートの「サフラン風味のグレープフルーツ、ヨーグルトのソルベ添え」も菊地シェフご自身がおいしいと思った、納得の組み合わせだそうだ。

 料理を作り終えた後、参加者からの質問に少し恥ずかしそうに答えられていたのが印象的であった。和食は好きか、食べ歩きはされているのかという質問には、和食は「すし」が大好きで、食べ歩きは毎週のように行っていると答えられていた。

 また、修業時代の話も伺えた。菊地シェフが料理を始めた頃、来る日も来る日も皿洗いばかりで、こんなことをしていて料理がいつ作れるようになるのかと自分を見失いそうになったとき、料理場の賄いの当番をする機会が訪れた。仕事が終わってから調理場に泊り込む勢いで一生懸命作ったそうだ。そして料理長や仲間から「菊地が作る賄いはうまい」と言われるのが嬉しくて、次の賄い当番が楽しみになり、仕事にも頑張れたそうだ。

 菊地シェフの基本方針は、自分自身が素直においしいと感じるものをお客さまのためにも作る、ということである。そのために今でも休みの日は食べ歩きに行っているそうだ。レストランに行く目的は、おいしいものを食べることもひとつだが、それだけではなく、友人と楽しく過ごすということがメインになる。その時間をおいしいものが演出する。そんな店に出会ったら、自分の店もそうありたいと思うそうだ。もちろん、おいしい料理に出会ったらそれを作ってみたいと思うそうである。そこで店の人にどのように作っているかを尋ねるようにしているらしい。このようなエピソードの中に菊地シェフの謙虚さと人柄が出ている。

 今回の講習から、料理には技術だけではなく、料理人の人柄も反映され、それらを含めて店というものが成り立っている、参加者の多くがそのように感じられたのではないだろうか。

うずらのフォワグラと
そら豆包みパン粉焼き

サフラン風味の
グレープフルーツ、
ヨーグルトのソルベ添え