■現在までの経緯
 短大卒業後、辻製菓へ入学しました。短大では栄養士コースで、卒業後は企業でOLという選択もありましたが、何か技術を身につけて一生続けられる仕事、自分で生産したものを提供してお金を得る仕事が私には向いていると思いました。そこで、昔からお菓子作りが好きだったので、フランスでお菓子を作ってみたいと思い、フランス校に行きたくて辻製菓を選んだのです。卒業後はフランス校へ進み、リヨンで半年間研修もしました。フランス校はがんばる気持ちにさせられるところで、ものすごく充実してやっていましたね。
 帰国後は半年間「ウェスティンホテル」でアルバイトをし、その時の宴会部門の料理長のご紹介で、97年4月に「ホテルモントレ神戸」に就職しました。97年の3月に山口浩料理長が「ホテルモントレ神戸」に来るまでは料理人がデザートも作っていたのですが、山口料理長が自分の料理を追求するにあたって、お菓子の部門を作らないと料理が完成しないと。で、初めてお菓子の部門ができたところへ私が行ったのです。私一人だったので大変でしたね。それまで作られていたデザートを、料理長の要望に合わせて変化させる形で作っていきました。他は皆さん料理人なので、料理人の立場から考えると視点が一方向からだけになるのですが、そんな中でパティシエのテクニックが、基本的なことでも、役立つことがありました。そのようなお互いの話の中から新しいデザートを誕生させたり、料理長のイメージするデザートを私が再現して作り上げていくという仕事がとても楽しかったです。「神戸北野ホテル」には00年5月から勤務しています。オープンにあたり、こちらへ移る山口総料理長が、一緒に連れてきて下さったんです。

■ホテルのシェフ・ド・パティシエとして
 「神戸北野ホテル」にはダイニングカフェ「イグレック」と、フレンチレストラン「アッシュ」の2つがあります。前者はカジュアルなフュージョン料理、後者は山口浩のフランス料理ですが、その両方でデザートを提供しています。「アッシュ」の方のデザートは12種類です。「ホテルモントレ神戸」では一種類から始まって、3年間で最終的には24種類まで出せるようにしましたが、あまり多いと選ぶのにお客様が迷ってしまう部分があると思い、こちらでは厳選して12種類にしています。でも新しい設備があるので、以前はできなかったデザートを今は出せるようになりました。

■後輩に伝えたいことは
 女性は体力的にキツイこともありますが、その中で仕事の中の自分の楽しみを見出して欲しいですね。今日はこれだけできた、でもまだ少し足りない部分がある、だから明日はこれを完璧にしようというような。給料がそれ程よくなくても、「しんどいだけだ」とは思わずに。ある程度しんどい思いをしない限り、自分が満足できる仕事はなかなかできないと思いますし、それを自分の中の喜びに変えていって欲しいですね。

■これからの目標は
 異人館の通りの方にパンとパティスリー・ブティックを作ったのですが、また新たに出店する予定があり、プロデュース面も任されているので、新しい商品展開もしていきたいです。また、レストランのデザートとテイクアウトのお菓子とのコラボレーションによる、新しい形のデザートも考えたいですね。
 今まですごく人に恵まれてきました。上に仰ぐ人は総料理長を始め料理人だけですが、料理人の視点を持ったパティシエでいられる自分がいます。将来は、自分が学んできたものを自分なりのアレンジで本にしたいという夢があります。また、パティシエは一生続けていきたいですが、レストランは拘束時間が長く、自分の時間もなかなかないので、また違った形でできる仕事も探していきたいですね。いつか自宅でお菓子教室をしたいなとも思っています。