こういう状況だからこそ、コミュニケーションが大切。
- 2021.05.20
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辻調理師専門学校 2004年卒業 / 辻調グループ フランス校(調理) 2005年卒業
水口 大輔
北海道・東京都・愛知県・大阪府・兵庫県・京都府・岡山県・広島県・福岡県・沖縄県の10都道府県を対象に緊急事態宣言が発出されています。
今回は時短営業に加えて酒類の提供も禁止になり、飲食業界にとっては厳しい日々が続いています。
先の見えない状況下で、辻調グループの卒業生がどのような活動をしているのかご紹介したいと思います。
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2011年から名古屋市内で『BISTRO DIA(ビストロダイア)』を営んでいる水口さん。現在、店舗は緊急事態宣言の発出に伴って休業中だが、昨年2月から独自に取り組まれてきたある活動を期間限定で復活させて好評を博している。
「昨年の2月時点で、これから世の中は大変なことになっていきそうだと思ったので、全スタッフを集めてミーティングを行いました。うちの店は高級フランス料理店ではなく気軽なビストロなので、席の感覚が近くてディスタンスを取ると極端に席数が減ってしまうんです」
感染予防対策の徹底はお客様にとっての安心材料になるが、どこまで徹底するかは難しい経営判断。水口さんはガイドラインに沿った対策を施した上で、しばらく時短営業を続けた後、店内営業を休止して完全にテイクアウトへとシフトチェンジした。
「マルシェ de ダイア」と銘打って水口さんがはじめたのは、単なるお弁当のテイクアウト販売だけではなく、臨場感やシズル感たっぷりの炭火焼の実演販売に加え、採算を度外視した野菜の販売、パスタソースやお惣菜など50種類ほどの豊富な商品も販売するという、まさに行くのが楽しみになるマルシェのような取り組み。和牛の握り寿司など定期的に特別メニューも用意して、お客様を飽きさせない工夫も凝らしていたそう。
「1日で300食ほど売れる日が続き、メディアにも取り上げられたことで人気にさらに火がついて、50mほどの行列ができることもありました」
この頃の睡眠時間は3時間程度しかなかったらしいが、それでも店舗営業とは違うおもしろさがあったと水口さんは振り返る。
「フランス料理なので、店舗営業の時は平均して2時間くらいお客様は滞在されます。その間ずっと神経を使っていましたが、店頭販売になると滞在時間は5分ほど。これまで来店されたことのないお客様との即興のコミュニケーションが展開されます。この違いはとてもおもしろかったですし、マルシェをきっかけにして多くの方に私たちのことを知ってもらうことができました」
10月頃にようやく需要も落ち着きだしたため、マルシェは12月いっぱいまでにして1月から店舗営業を再開しようと考えていた水口さん。しかし、新型コロナウイルスの感染状況はなかなか好転せず、1月に再び緊急事態宣言が発出されたことや、お客様からの要望が強かったこともあり、2月末までマルシェを継続。
「お客さんがレストランで食事したくてウズウズしている」のを感じていた水口さんが、約1年にわたるマルシェ営業を終えてレストラン営業を再開したのは、3月4日のことだった。
レストラン営業再開後も状況が日々変化していくため、毎月のように営業時間の変更などの対応に追われている。この状況はしばらく続くことが予想されるが、これから飲食店が生き抜いていくために必要なことは何なのか?お店の展望を含めて水口さんに尋ねたところ、キーワードは「コミュニケーション」だと教えてくれた。
「これだけ自粛が続く世の中で、どういうお店に行きたいか?答えはオーナーシェフのいるお店だと思います。ミッキーのいないディズニーランドには行きたくないですよね。レストランも同じで、オーナーシェフが常にお店にいて、しっかりコミュニケーションの取れるお店が強い店だと思っています。おいしいことは当たり前。接客や空間がいいのも当たり前。その上でお店全体として、どれだけお客様に寄り添ったコミュニケーションを取れるかが重要だと思います。ありがとうございますの一言をとっても、心から言っているのかどうかはお客様に伝わりますので」
実はビストロダイアの開業後、毎年のようにコンセプトの異なる店舗を展開していった水口さん。愛知の空の玄関口であるセントレア空港や、名古屋のアイコン的な商業施設であるグローバルゲートなどにも出店し、合計5店舗までグループを拡大させたが、現在はビストロダイア1店舗のみに集約。こうした経験も踏まえた先の言葉には、水口さんなりの強い思いが感じられる。
「嘘を言わない。ずるさを出さない。目先のお金を目的にしない。こうした姿勢は必ずお客様に伝わります。客単価数万円は当たり前のことでないんです。1円でもいただけたなら感謝の気持ちを持たなければいけません。マルシェで多くのお客様と触れ合う中で、そう気づくことができました」
コミュニケーションを取るといっても、対面だけがコミュニケーションの場ではない。ビストロダイアでは、InstagramとFacebookで頻繁に情報を発信して、お客様との交流をはかっている。3度目の緊急事態宣言で店舗は休業中だが、「マルシェ de ダイア」の復活をSNSで告知をすれば、たちまちお客様から多くの反応が集まる。こうした活動も含めた「コミュニケーション」は変化に強く、臨機応変に対応していく力がある。
これから水口さんがどんな「コミュニケーション」を展開していくのか、とても楽しみだ。
BISTRO DIA(ビストロダイア)
名古屋市中区葵2丁目13-30 アマーレ葵1F
TEL:052-934-1011
・オフィシャルHP https://bistrodia.com/
・Instagram https://www.instagram.com/bistrodia/
・Facebook https://www.facebook.com/BistroDia/
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