この人、この食材

この人、この食材

  • 2023.05.17
    • コラム

シェフやオーナーたちが偏愛する食材は、お店の個性そのものと言っても過言ではありません。食材への思いを存分に語ってもらいながら、どんな料理に変貌させるのかまでをレポートします。

Salmon & Trout シェフ
エコール 辻 東京 2004年卒業 / フランス校 2005年卒業

中村 拓登さん

中村さんが選んだ食材は【 霞ヶ浦産 淡水魚のシラウオ 】

日本で二番目に大きな湖である茨城県の霞ヶ浦で獲れた淡水魚のシラウオ。一般的にシラウオは河口付近や汽水域で獲れる魚だが、霞ヶ浦は水門ができたことで汽水湖から淡水湖になり、独自の生態系を持つように。中村さんは霞ヶ浦の漁師と直接取引しているため、シラウオの鮮度も抜群だ。

白米と黒米を綿棒でのばし、油で揚げてカリカリのせんべい状に。

シラウオは生のまま、霞ヶ浦の川エビと紅麹でつくった自家製醬で和える。

最後にぬか床とコーヒーかすを混ぜて乾燥パウダーにしたものをかけ、風味づけにカスリメティを添える。

淡水魚ならではの香りに複雑な風味が加わり、他にはない逸品に仕上がった。

淡水魚の可能性を広げていきたい

 今回、料理に使ったシラウオは、茨城県の霞ヶ浦で獲れた淡水魚です。私が淡水魚を好んで使う理由は、大きくふたつあります。
 まず、ひとつめは保全の観点です。海外に比べて漁業資源の管理が遅れている日本で、資源が枯渇している海の魚から良いものを選ぶ行為は、資源の減少に拍車をかけてしまいます。だから、市場価値の高い一部の海産物を使わないことが、料理人としてできる最大の資源保護活動なのではと考えています。

 ふたつめは、知れば知るほど純粋に淡水魚を使う理由しか見当たらないからです。ウナギや鮎など、一部の淡水魚以外は劣等食材と思われていて、日本ではきちんと利用されていませんが、この状況は少しおかしいと感じています。私の地元である霞ヶ浦に目を向けてみると、漁師がいて淡水魚の食文化もあって、さらには産官学が連携して、かなり意欲的な取り組みを展開しています。

 たとえば、AIで鮮度を判別して、魚のランク分けまで行ったり。判別した鮮度と味のデータを分析したり。漁獲量もデータ管理して、エリアごとに計画的な漁を行ったりしています。
 霞ヶ浦の素晴らしい環境は料理人としてのクリエイティビティを刺激してくれます。これからも淡水魚の可能性を広げ、淡水魚の美味しさを広め続けていきたいです。

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