わたしの一冊
- 2023.03.03
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勉強になった一冊から人生を変えた一冊まで。
いろんな人の、いろんな一冊をご紹介します。
堀田 朗子さん
1980年、辻調理師専門学校卒。それからずっと辻調一筋で、調理師学校・製菓学校・フランス校・国立校を製菓職員として渡り歩く。「どっちの料理ショー」や「きょうの料理」にも出演。食べることと歌うことが大好き!
堀田さんが選んだ一冊は
『名品フランス菓子[ 全3巻 ]
Le Trésor de la Pâtisserie de la France Contemporaine』
なんとも大層なタイトルを持ち出してしまいましたが、辻調で働きだして、初めて本づくりに参加させてもらった一冊(三冊)です。
製菓の職員として働き始めた1980年当時は、パソコンも携帯もない時代、情報源は書籍だけで、当初は川北先生の『ヨーロッパのデザート』だけを頼りに授業の予習をしていました。まだ、「スイーツ」という呼び方もない頃でしたが、ブームの兆しがあったのでしょうか、その後次々とお菓子の全集が出版され、学校からも何冊か本が出ました。『マックスライナー氏のドイツ菓子』、横山先生の『ウイーン菓子スペシャリテ』など、その頃の料理本は装丁も豪華、大判のフィルム写真は凝っていて、お菓子の写真1品撮るのに何時間もかけるのが普通でした。
辻調はまだグループ校ではなく、「辻調理師専門学校」だけで、製菓の授業は少なかったのですが、その後フランス校が開校し、やがて製菓専門学校ができるという頃、M.O.F.を持つフランス人シェフが次々と招聘され、この『名品フランス菓子』にまとめられました。歴史ある伝統的なお菓子もあれば、当時の先端技術を使った新しいケーキもあり、またパティシエの名の通りパート(粉生地)を使ったお惣菜まで、記録係として間近で見せてもらう幸運に恵まれました。その時のノートがまだ手元にあるのですが、当時の頼りないフランス語であることを除けば、イラスト付きで細かな情報まで記録しており、初めてフランス菓子そのものに触れた感激が残っています。
巻頭には、4人のフランス人シェフと、今はもう学校を去られた先輩方のポートレートが並んでいます。シェフたちを職人さんと呼び、作るお菓子の「振り」のよさについて書かれた辻静雄前校長の監修のことばには勢いがあって、何度も読み返したくなります。
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