人との縁を大切にする。結局は、そこに尽きると思います。

人との縁を大切にする。結局は、そこに尽きると思います。

  • 2020.08.21
    • 卒業生
Compitum 副会長 / 一汁二菜うえの 主人
辻調理師専門学校 1980年卒業

上野 法男

コロナ禍の動きを教えてください

 最初は、すぐに収まるだろうと思っていました。だから、緊急事態宣言後も箕面店は休業せず、時間を短縮して営業を続けていたんです。豊中店は店舗営業を休みにして、お弁当のテイクアウトのみに切り替えました。ただ、箕面店はずっと開店休業状態でしたね。売上も昨対比で90%減にまで落ち込みました。

本来なら、夏はホタルや青楓、秋は紅葉を楽しむ人がたくさん訪れる。

 大阪の緊急事態宣言が解除されてから少しずつ客足は戻ってきましたが、席数を減らしているので売上的にはそれほど伸びず、お弁当の注文で何とかつないでいた感じです。お弁当はこれまでも頼まれればつくっていましたが、4月からメニュー化して明確に打ち出していきました。価格は三千五百円から。すると多くの常連さんが「来店できない代わりに」と、五千円から一万円くらいのものを注文してくださったんです。その気持ちが本当にありがたく、嬉しかったですね。

箕面店はすべて個室になっているので、来店する側も安心できる。
味、ボリューム、品数すべてにおいて大満足のお弁当(3,500円)。

どんなことを考え、
どんなことに取り組まれましたか

 スタッフを守らなければいけない。何よりも、それが一番でしたね。だから、有給休暇を使って休養してもらったり、少しでも体調が悪ければ2週間休んでもらって様子を見たりしていました。夜の営業もほとんどお客様が来ないので、仕込みだけして夕方には帰ってもらったり。やはり体が資本ですから、体調面のケアは徹底して行っていました。

 そして、スタッフの雇用と生活を守るために、資金づくりにも動きました。普段から税金はしっかり払っていたので(笑)、付き合いのある銀行がすぐに対応してくれました。それで1年くらいは何とかなる目処が立ったので、とりあえずは安心です。会社がふたつあるので、それぞれの会社で持続化給付金などの制度も利用しましたが、人件費などの経費ですぐに消えていってしまいました。

 お店以外での活動として、デルタ航空の機内食を監修しているのですが、航空産業の壊滅的な被害を見ていると今後の契約はなくなるだろうと考えています。関西国際空港の機内食工場の顧問もしていますが、ここも稼働率は5%くらい。おそらく、これからは機内食自体が簡易的なものになり、工場も簡略化されていくのではないでしょうか。
 当然、これまでも店舗に来てくださるお客様は大切にしてきましたが、こういった流れを考えると、今後ますます店舗での営業を大切にしていかなければと思っています。

未来への思いをお聞かせください

 実は、近々うどん屋を出す予定なんです。大規模な店や高級店はリスクが高いので、これからは家族経営の小さな店が増えていくはずです。だから、脱サラした人でも経営できるモデルをつくりたいと考え、原価率など諸々の事情を考慮した結果、うどんが最適だという結論に至りました。このモデルが成功するか否かは、今後の努力次第ですが、本体である高級日本料理という道をなくすつもりはありません。「一汁二菜うえの」を核にして、さまざまな可能性を追求していきたいと思っています。これから料理の道に入る若い子たちのためにも、本物の料理を勉強できる場は残してあげたいですしね。

コロナ禍の日常から離れ、山の中でしばし非日常の休息を味わうことができる

コンピトゥム会員の皆さまへ
メッセージをお願いします

 おいしいだけでは、人は食べに来てくれません。続いている店、人気のある店というのは、お客様に尽くし、喜んで帰ってもらうことに注力しています。どこまで人との縁を大切にできるか。結局は、そこなんだと思います。困ったときに助けてもらえるのは、そういった少しずつの積み重ねがあるからではないでしょうか。
 関係するすべての人との縁を大切にしながら、未来へ向かって進んでいきましょう。

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