誰も正解を知らない。 だから、ポジティブな姿勢が大切。

誰も正解を知らない。 だから、ポジティブな姿勢が大切。

  • 2020.09.03
    • 卒業生
Compitum 副会長 / ナベノイズム エグゼクティブシェフ
辻調理師専門学校 1988年卒業 / 辻調グループ フランス校(調理) 1989年卒業

渡辺 雄一郎

コロナ禍の動きを教えてください

 1月は好調でした。前年よりも売上が多く、正月も店を開けていましたが、お客様の入りも上々だったんです。それが2月の後半から「これは、おかしいぞ」と感じはじめ、3月に入るとキャンセルが一気に増えました。東京は日本の中で最も感染者数が多く、状況も悪化の一途を辿っていたので、「一体お店は、東京は、世界はどうなってしまうんだ」。そんな不安がスタッフの顔には、ありありと浮かんでいましたね。お客様とスタッフの安全を守らなければ。そう考えて、4月5日から自主的に休業することを決断しました。東京都に緊急事態宣言が発令される2日前のことです。

どんなことを考え、
どんなことに取り組まれましたか

 休業期間中は、とにかく情報収集しながら今後の動きについて考えました。開業して4年。やっと安定期に入ってきたところで、このコロナ禍です。店を続けるのかどうかという瀬戸際まで考えましたが、開業して4年だからこそ、まだまだ先があると思えたし、進んで行く決断ができました。もし、これが20年くらいやっている店だったら、違う選択をしていたかもしれません。

隅田川に面して設けてある窓やテラスは、最高に気持ちのいい換気機能になっている。

 休業してから2週間後。テイクアウト商品を新たに開発して、調理3人、サービス1人の体制でお店を再始動しました。翌週からは、東京都のガイドラインに従った対策を施した上で、時間を短縮して営業を再開。感染防止徹底宣言ステッカーも取得して、お客様に安心して来店してもらえる体制を整えていきました。席の間にパーテーションとしてカーテンを設置したり、空気清浄機を導入したりもしましたね。店内滞在時間のことも考慮して、コースの皿数を減らし、一皿ごとの内容を充実させるメニュー改良にも取り組みました。

品良く引かれたカーテンは、元からあったかのように店内に溶け込んでいる。
「お客様の顔が見えない料理中でも、おもてなしの気持ちを忘れてはいけない」。
日頃からスタッフに伝えている言葉だ。

未来への思いをお聞かせください

 「コンヴィヴィアリテ」というフランス語があります。「打ち解けた温かい雰囲気」という意味で、先代の辻静雄校長とロブションさんが好きだった言葉です。私もそれを受け継いで大切にしているのですが、コロナはこの「コンヴィヴィアリテ」を破壊し、レストランのあるべき姿は失われてしまいました。ただ、ネガティブになっていても仕方がありません。この先どうなるのかなんて誰にもわからないのですから、できることを探してポジティブにやっていくしかないと思っています。ナベノイズムのスタッフたちも、それを理解してくれているので、店には明るい笑顔が溢れています。

 それに、悪いことばかりじゃなくて、コロナによって身体的な距離は離れてしまいましたが、スタッフ間の絆や連携はより密になったと感じています。状況把握やメンタルケアのために、これまで以上にコミュニケーションを取るようになったおかげですね。
 あとは、ナベノイズムという店の中でできること以外にも、企業に技術やアイデアを提供したり、商品を監修したりと、幅広い可能性を追求していきたいと思っています。

コンピトゥム会員の皆さまへ
メッセージをお願いします

 世界中が同じ状態です。とにかく明るく、前向きに生きるしかありません。そして、決して根本の部分を忘れないでください。私たちは、お客様のために料理をつくっているということ。料理が大好きだからやっているということを。
 同じ辻調イズムを継承している者として、料理の可能性を絶対に諦めないで頑張り抜きましょう。

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