誠実な姿勢は料理にも表れる。
- 2020.09.10
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手嶋 義之:辻調理師専門学校 1991年卒業 / 辻調グループ フランス校(調理) 1992年卒業
手嶋 法子:辻調理師専門学校 1991年卒業
手嶋 義之 / 手嶋 法子
「この人、絶対に手を抜かないんです」と少し困ったような笑顔でマダムの法子さんが言うと、「おいしいものを誠実につくっているだけ」とシェフの手嶋さんは笑う。
本格的な料理を気軽に楽しめるリストランテとして、2003年にオープンして以来、地元はもちろん、遠方からのお客様にも愛され続けてきた『テシマ』。多くのファンを持つこの店であっても、いや、多くのファンを持つこの店だからこそ、良くも悪くもコロナの影響は相当なものだった。
「3月末までは、割と普通でした。ガクッと落ちたのが4月ですね。緊急事態宣言が出て、お客様の動きがパタッと止まったんです。すぐにお店の公式LINEアカウントをつくって、常連さんや友人の方を対象としたテイクアウトに切り替えました。例年、おせち料理の販売をやっていたので、テイクアウト自体には慣れていたんです。それでも、4月は寝る時間もあまりないくらい忙しかったですね」
そこまで忙しかった理由は、テイクアウトの品数にもある。お店の味を家で楽しむのは、あくまで非日常のこと。その後に続く日常のために、イタリアンだけではなくカレーや炊き込みご飯、デザートなども用意したい。そんな思いからメニューが広がり、一切手を抜くことがないため、結果として夜中まで仕込みをする日が続いたというわけだ。
「みなさんが心配して注文してくださるのが本当に嬉しかったです。連日たくさんの注文をいただき、その度に涙が出る思いでした。LINEに登録してくれていた300名程のお客様が、ひと通りテイクアウトを注文してくださいました。5月にはその波も落ち着きましたが、そこから来店者数も少しずつ回復していき、8月のオマールフェスタと周年祭でかなり復活した印象です。これからも状況は変わり続けると思いますが、私たちはお客様のために誠実に料理をつくり続けていくだけです。やるべきことは変わりません」
料理には、つくり手の腕が表れる。と同時に、姿勢も表れる。福岡も安さを売りにする店が増えたそうだが、こういった状況下で支持されるのは、やはりきちんと仕事をしている店だろう。信頼は安売りでは得られないのだ。手嶋夫婦を見ていると、それがよくわかる。
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