食文化の価値は決して変わらない。

食文化の価値は決して変わらない。

  • 2020.07.10
    • 卒業生
四川料理 巴蜀(ハショク) / オーナーシェフ
辻調理師専門学校 1998年卒業 / 辻調理技術研究所 1999年卒業

荻野 亮平

「日本の中国料理と本場のそれは、まったく別物だぞ」。四川料理店での修業中に、中国留学から帰ってきた先輩に言われたこの一言がきっかけで、荻野さんは中国へと渡る決心をする。

 1年間、四川大学で語学の勉強に打ち込みながら、毎日のように本場の料理を食べ歩いた。それは食べ歩きというより、フィールドワークといった方が正確かもしれない。当時の中国は、文化大革命によって失われた伝統料理を復活させる動きが盛んだったため、食べ歩きはそのまま貴重な回顧録になったのだ。

 帰国後も文献を読み込んで研究し、年に一度は中国へ行って食べ歩いた。調理場を覗いて、直接つくり方を聞くことも多かったそうだ。そうした研究の果てにたどり着いたのが、現在お店で出している伝統的な四川料理だ。

「他店にはない独自の魅力は、地域のお客様にも好評でした。でも、コロナはそんなものを軽々と吹き飛ばし、他店と同じように甚大な被害をもたらしました。従業員と家族を守るためテイクアウトにも力を入れましたが、これまで培ってきた強みを伸ばすことこそ大切だと考えるようになったんです」

その強みとは、もちろん食文化の研究。来店者数が減り、時間に余裕ができた分だけ研究に打ち込んだ。大学で博士号を取得することも検討中だ。

「最終的には、研究内容をそのまま提供できるような店をやりたいですね。コロナでどんなに世の中が変わっても、食文化の価値は決して変わらないですから」

荻野さんの飽くなき探究心が、未来にどんな食文化を残すのか、いまから楽しみでならない。

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