Pascal COHARD(パスカル コアール)先生インタビュー

  • 2023.08.31
    • コラム

フランス校で35年以上の長きに渡り教鞭をとられたPascal COHARD(パスカル コアール)先生が、8月31日に定年退職を迎えられました。
退職日を前に、教員生活のこと、引退後のことなどお話を伺いました。

■今後の人生でやりたいことは何ですか?(退職後のご計画は?)
まずは環境を変え、気分を変え……くだらないことで脳内を浄化したいですね。どうするか ?
山の中にある古民家をできるだけ早く改築する予定です。 その後、オーケストラ音楽(トロンボーンを45年続けています)を続けて、運動も再開しようと思っています。音楽については、ここ数年、さまざまな活動をしている団体の責任者を務めてきました。好きなことなので続けていこうと思います。
そしてもちろん、私が娘たちにできなかったことを孫たちにしてあげたいです。 祖父として、時には甘いおじいちゃんとして、家族のために尽くしたいです。
「プロの料理人」としての仕事の終わりを実感させられるこの質問に答えていると、やはり料理との関わりも私にとって重要です。新しい料理のマリアージュ(組み合わせ)やインスタグラムでシェアする新しいレシピを探したいと思っています! おそらくプロとして消えることへの恐怖からですね! 笑
でも、共有することへの喜びを感じています。 それは確かです!

■35年以上に渡る教員生活で、「この学生は料理人としてもっと成長する」と感じたことはありますか?
「はい」と言いたいところですが! 料理人となると即答できません(「料理」とは、創造する力、想像する力、新しいバランスを発見する力を意味します。結局のところ、料理とはそういうものでしょう)。料理人の素養は、カリスマ性よりも組織力、行動力です。実技の授業では、常識や仕事を読む力、組織力などがすぐに明らかになります。
35年間、私はあらゆるスタイル、立場、背景の若者をみてきました。内気でひ弱な若い料理人がクリエイティブになれるのでしょうか? もちろん、なれます。ルールはありません。必要なのは、創造性を発揮するためのポジティブで穏やかな環境だけです。私はよく彼らにこのように伝えます。
「あなたの心を語らせ、あなたの感情と想像力を引き出してください。若い料理人が自分の心の鍵を見つけることができれば、誰でも偉大なシェフに、あるいは非常に偉大なシェフになることができるのです」
この35年間、私は学生により穏やかな環境を与えるために自分自身を進化させてきました。たとえ、常に成功してきたわけではないとしても。 時折、私は厳しすぎるときがあります。日本の教師仲間によれば、よく水曜日にこういう行動をしてしまうようです。なぜこうなるのかは、いまだにわかりません。
フランス校は、どこか子供じみた精神を持ちながらも大人になろうとする若い料理人たちを責任あるプロへと変え、彼らの未来を切り開く大きな機会を提供しています。
人は食べることも必要ですが、文化的な栄養も必要です。料理は創造的な芸術でもあります。芸術にはさまざまな方向性があり、スタイルがありますから、料理人にもさまざまな可能性があります。芸術は無限です。彼らがもたらす次の料理を楽しみにしています。

■そう思ったとき、どのくらいの確率で、その予想は当たりましたか?
一度もありません……。あまりにも多くのものに影響されるからです。生徒の語学力とか、常に笑顔でいるとか、または手入れの行き届いていない髪、髭を剃っていない学生などもそうです。それらの情報に影響されるとその人の資質は簡単には見抜けません。

■辻調グループ フランス校で、料理を学んだ人たちの「料理人」としての強みは何だと思いますか?
学んだこと全てです!
辻調グループフランス校は、生徒2、3人に対して教師1人が教える(付き添う)という特別な学校です! このような学校は他には存在しません。また、シャトーではさまざまな食材を扱っていますが、どれも非常に高品質で、季節に合わせ、まさに旬の食材を使用しています。さらに、調理・製菓の外来講師や専門講義の講師がいます。彼らの教えが、フランス料理に独自の視点をもたらしてくれ、現代の料理と調和することができるのです。シャトーには、フランスの食文化が凝縮されています。
もしも学生が自分の目標を明確に理解しているなら、スポンジのごとく記録的な速さで知識を得ることができます。本来、料理を理解するには何年もかかりますが、フランス校では6ヶ月でその知識を得ることができます。それに加えて、新しい知識や新しい人との出会いを得るスタージュ(研修)が加わります。 フランス校の卒業生にとって、フランス校は”家族”でもあることを忘れてはいけません。


■学校の教職員、卒業生へメッセージをお願いします。

~先生たちへ!~
心を広く持って ……自分の知識に満足しないでください!! どうすればもっと良くなるかを模索してください。 私は辻調の精神『DOCENDO DISCIMUS』が大好きで « 自分のものにしました » 。
科学、化学、農業、生命に関心を持つこと。年齢は知識や勝利の証にはなりません。やる気のある若者は何にも勝ります。若い人たちを大切にしましょう。指導で実績を残し、さらに素晴らしい料理の実績と組み合わせてください。常に寛大であってください。
利己的にならず、ケチにならないでください! 与える人になってください。先生、生徒、学校、これらはカクテルのようなものです。それぞれを敬い合うバランスが重要ということです。

~卒業生の皆さんへ~
個人としてもプロとしても、あなたたちの幸運を祈っています。
自分の道を切り開いてください。教訓に囚われてはいけません。尊敬しなさい! でも、覆してみなさい! 自分の料理は自分で作り、自分の人生は自分で作ってください。
私は「レストラン経営者」としての私の知識、欲求、味を皆さんに届けようとしてきました。しかし、あなたたちは私に多くのものを与えてくれました。何よりもまず、あなたたちの若さ、そして山奥の若い料理人であった私とは異なる文化を通して、私を形作り、育ててくれたのです。
私は両親から非常に良い教育を受けてきましたが、皆さんも私に多くのものをもたらしてくれました。
ありがとう。そして、フランスの食文化に興味を持ってくれてありがとう。

« Je suis cuisinier, donc il faut …»
「私は料理人です、ゆえに …… 」

友情と敬意をこめて

パスカル

(取材・編集協力:フランス校事務局)

辻芳樹代表より感謝状が贈呈されました
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