この人、この食材
- 2024.01.31
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シェフやオーナーたちが偏愛する食材は、お店の個性そのものと言っても過言ではありません。「この人、この食材」では、食材への思いを存分に語ってもらいながら、どんな料理に変貌させるのかまでをレポートします。
Sensa-Banbetsu オーナーシェフエコール 辻 東京 2001年卒業
舘野 毅さん
舘野さんが選んだ食材は【 函南町で養殖したチョウザメ 】
一般的にチョウザメは、キャビアを作るためだけに育てられ、卵を産まないオスのチョウザメや採卵後のメスのチョウザメは捨てられてしまいます。そんな現実を変えるために、静岡県田方郡函南町では養殖したチョウザメの食材としての魅力や食文化を発信し、チョウザメの大切な命をつなぐ活動に取り組んでいます。
養殖現場を見せてもらいに行くと、成長具合に合わせて区切られた池の中に、たくさんのチョウザメが泳いでいた。
豊富な山の湧水をかけ流して養殖しているため一年を通して水温は一定で、「チョウザメが育つのに最適な環境です」と舘野さん。
舘野さんの店名にもある通り、チョウザメの身質は千差万別。また、チョウザメは骨の構造が特殊なため、三枚おろしではなく五枚下ろしにする。魚体が大きいことに加え、かなりヌメりもあるため捌くには技術もいるそうだ。
今回捌いたチョウザメは、黄色みがかった脂をもつ個体だ。
スライスした状態でもはっきりわかる黄色い脂。少し熟成させてマリネにしても、スモークしても、どんな調理法でもおいしく仕上がる。
「チョウザメと言えば、キャビア。
そうイメージする人がほとんどだと思いますが、チョウザメは身こそ食べてほしい魚です。カマの部分なんて『今まで食べたカマで一番美味しい』とよく言われます。
また、個性の違いが鮮明に出るおもしろい魚で、身の質感や脂のノリが個体によって異なります。脂の色味も白色や黄色などさまざま。捌くたびに新たな発見があり、新たな調理法を模索したくなる魚だと言えます」
「キャビア目的の乱獲が繰り返されたことで、絶滅危惧種に指定されてはいますが、ここ函南町ではキャビア目的だけではないチョウザメの養殖に本気で取り組んでいます。
私はキャビア専門店とチョウザメ料理専門店で合計15年シェフを務めていたことから、『チョウザメについて教えてほしい』と函南ちょうざめ企業組合からお声がけいただき、色々とお手伝いしているうちに函南町へ移住してレストランを開くことになりました」
火の入り具合を細かく見ながら、キャビアと身が半分レアになり、なおかつ蓄えた脂が溶け出すように素早くカラッと揚げる舘野さん。
「函南ちょうざめ企業組合と一緒に養殖に取り組みながら、お店でチョウザメ料理を提供し、SNSなどで情報発信もすることで、少しでもチョウザメの価値や可能性を知ってもらいたい。そんな考えのもと、函南町をチョウザメの町にしようと日々奮闘しています。
さまざまな加工品の開発にも力を入れ、ギフトセットのネット販売もしています。捌くのが難しい魚なので、他店でも気軽に扱えるように、うちで捌いた切り身を販売することも検討中です」
「最終目標は、スーパーの鮮魚コーナーに並ぶほどチョウザメを身近な魚にすることなので、チョウザメを使いたい方、興味のある方は、ぜひお問い合わせください!」
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