「コーヒーとお菓子」という視点から、コーヒーについて考えてみたい。と、いっても、基本的なことはおさえておいていただきたいので、まず、今回と次回でコーヒーの品質について、その後、焙煎とコーヒーの味創り、コーヒーの抽出の基礎、エスプレッソ、コーヒーとお菓子と進めてゆこうと思う。
よく、コーヒーはワインに似ているといわれる。確かに生産地域での問題はワインと比較しながら考えるとわかりやすいことが多い。ここでも適宜ワインを喩えに使おうと思うが、ただワインとコーヒーのアナロジーをあまり厳密に考えるのは危険で、一般的には、コーヒーの方がずっといい加減だ。そんなこともあってか、似ていると言い張っているのは、一方的にコーヒーの側からだけなのだが・・・。 順を追ってコーヒーの品質に関わる問題を説明していこう。 (1)栽培 農作物全般にいえることだろうが、栽培種・品種、栽培環境(標高・土壌、気温降雨量等)、栽培方法が品質を決める。ワインの場合はヨーロッパのように、管理呼称制度によって3つのファクターすべてに規制をかけているが、コーヒーでは政府の指導程度。一般的には個々の農園と取引するケースは少なく(最近は増えつつある)、輸出業者(政府機関の場合も)が複数の農園の豆を混ぜた生豆が流通する。栽培関連ではワインと同じように種・品種の認識が特に重要なので、後に詳しく取り上げたい。 (2)(3)収穫・精製 果実(コーヒーの実)から果肉をはずし、種子(生豆)を取り出す工程。果肉ごと乾燥させて脱穀する方法(自然乾燥式)と、まず一部果肉をはずし、水槽の中で残りの果肉を発酵させ、水洗いしながら除去する方法(水洗式)がある。味にも違いがある(一般的には自然乾燥式の方が酸味がやわらかい)が、水洗式の方が工程が複雑で、不良豆をチェックする機会が多いので、不良豆の混入が少ない。ブラジルの大部分とエチオピアの一部、ロブスタの産出国を除けば、ほとんど水洗式を採用している。 (4)格付け 生産国では生豆をそれぞれ基準でグレード分けしている。つまり、同じブラジルでも高級品も低級品もあるということだ。中米(メキシコ、グアテマラ、等)はすべて高度が基準(高地の方が良品)、コロンビアはサイズ(大:スプレモが良品)、ケニアはサイズ+味、ブラジルはサイズ+欠点豆の混入率+味といった具合である。さらにワインと同じように同一国内でも、産地による良し悪しもある。 このように、コーヒーの品質の判断にはかなりの予備知識が必要だが、ものすごく乱暴にいえば、大きくて、緑色が濃くて(高地産の特長)、色が均一(欠点豆が少ない)なものが優良品ということだ(少なくとも低級品ではない)。 そして優良品を素直に焙煎すると、味・香り・コクが強く、個性的な風味はあるが、雑味・異臭のしないコーヒーになる。
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