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コラム&レシピ


フランス料理はア・ラ・モード。
時代の流れの中で、どんどん変化する。
どの時代の料理人たちも常に新しい食材、新しい技術、新しい提供の仕方を追及し続ける。店に足を運んでくれるお客に対し、あるいは世間に対して、彼らの言うところの「petite surprise(プティット・シュルプリーズ)」(小さな驚き)を作り出すべく、常にアンテナを研ぎ澄ませる。
誰かが新しいことを試みても、受け入れらなければすぐに消えていく。
そんな中で長く残っているものの一つに、「泡」がある。


かつて料理人たちは、シノワで漉したり表面の泡をすくったりして、ソースやスープから泡を完璧に消し去ろうとして苦心してきた。それまでタブーとされていた泡を、あえてソースやスープに入れる。80年代に誰が最初にはじめたのか・・・?
ハンドミキサーで泡立てたスープに「カプチーノ」という名前をつけたミヨネーのアラン・シャペルだろうか?同じ時代、メニューに「MILK SHAKE」と記したミュンヘンのヴィンクラー?はたまた、「おいしく食べて太らない料理(キュイジーヌ・マンスール)」を提唱したミッシェル・ゲラール?いずれにしろ登場から約20数年を経て、今でもフランス料理では新たな泡が生み出されている。
今回は、フランス料理の歴史の中でどんな「泡」が登場したかを見ていく。


1600年代後半 
現代から遡ること300年余り、ルイ14世の時代に登場した「ムース」。これが泡の始まりではないか?宴席に女性が同席し始めた時代、殿方の前で大きな口を開けるのははばかられる。そこであまり噛まなくてもすむようにムースが登場した。本来口の中で噛み砕く作業を、料理人が包丁やすり鉢を使ってつぶすことで代わりに行っている。
 
 
   
1800年代初頭 
ここにアントワーヌ・ボーヴィリエ著『料理人の技術』(1814年)から「山うずらのクネル」を再現してみる。クネルは、魚や肉のすり身にパナード(小麦粉やパンに水や牛乳を加えて加熱して作るつなぎ)を加えてゆでたもの。フードプロセッサーも肉挽き器も無い時代、山うずらの肉を包丁で叩きつぶし、モルティエですりつぶし、さらに裏ごしにかける。こうした作業は料理人の中でも腕っぷしの強い者が請け負ったのだろう。そう簡単に想像できるくらい、ハードな作業である。かなりバターが多いクネルだが、出来上がりはフワフワと柔らかい。ソースはガラをベースにした出し汁をしっかり煮詰めてからソース・エスパニョル(肉をベースにし、ルーでつないだ茶色いソース)を加えてあるので濃厚。しかも布漉ししているので舌触りは滑らかである。現代の料理に比べて工程が複雑。ルセットにクネルに火をとおす方法が丁寧に書いてあるのが興味深い。
 
 
 
  1900年代初頭 
オーギュスト・エスコフィエ著『料理の手引き』(1902年)から「フォワ・グラのムース」を再現。主材料のピュレに泡立てた生クリームを加える。現在のムースとさほど変わらないが、ヴルーテが入ることで味に独特のコクがでる。こういう味・・・久々に美味しい。
 
 
1970年代後半
ムースの全盛時代到来。フードプロセッサーも登場し、料理人がこぞって軽いムースを作り出す。魚介、家禽、ジビエ、あらゆる素材がムースにされた。料理名も「バヴァロワ〜」「スフレ〜」など、より軽いイメージで名づけられる。70年代初頭のラ・ヌーベル・キュイジーヌ・フランセーズ(新フランス料理)の流れを受けて、ソースはより濃度の少ないものになり、ムースと一緒に食べやすいようにソーススプーンが使われるようになる。
ムースの流行はフランス以外のレストランにも広まった。ロンドンの当時三ツ星の「ガヴローシュ」のスペシャリテである「オマール海老のムースリーヌ」を再現しよう。オマール海老、卵白、生クリームだけで作る、軽く柔らかなムース。
 
 
 
1980年前後
いよいよ泡の入ったスープやソースの登場である。今では多くのレストランで出されているカプチーノ仕立てのポタージュは、その代表であろう。時代は料理を軽く仕上げる方向に向かっていた。ソースもポタージュも。ソースの濃度が薄くなるにつれ、ボリュームを持たせるために、それまでタブーとされていた泡を加える技法が考え出される。この頃、フランス以外の国ではドイツのシェフが注目されており、彼等もやはり泡を料理に取り込んでいた。元々家庭用の調理器具であったハンドミキサーを料理人が使い始め、サービスの直前に一人前ずつ泡立てられるようになったことも、大いに影響している。
 
 
 
1990年代
90年代に入るとスペインのレストランが注目される。「エル・ブジ」フェラン・アドリアは、サイフォンを使ったさまざまなエスプーマ(泡)を発表した。液体にガスを注入して泡を作り出す。軽い泡はまさしく泡沫(うたかた)のムース。
また「フォワ・グラのアイスキノア、温かいコンソメ添え」では、フォワ・グラをパコジェットで冷たいパウダーにしているが、ここにも泡に通じる軽さを感じる。キノアとは穀物の名で、パウダーの形状に似ているところからこの名がついた。冷たいフォワ・グラのサラサラパウダーに濃いコンソメ。小さな驚きを与えるには十分なインパクトである。
 
 
現代人の好みにあった口当たりのよさと、軽くてもボリュームが出る使いやすさ。軽さを求める時代にうまく適応して「泡」は生き残ってきた。2000年以降、「エル・ブジ」にはヌーベやエアーなどの新たな泡も登場。こうして料理人はいつの時代も新しいものを捜し求め、研鑽に日々励む。
まだまだ泡は進化し続けるのか?あるいは他に新しい驚きが生み出され、歴史がつむがれるのか・・・。フランス料理は進化し続ける。



 

■主任教授の知識を盗む Vol.1「日本料理の料理観 その1」畑 耕一郎 日本料理主任教授
■主任教授の知識を盗む Vol.2「日本料理の料理観 その2」畑 耕一郎 日本料理主任教授
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