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ところで、平井先生は今年6月にご自身のお店をリニューアルさせましたね。お店のコンセプトが“人に優しい”であると伺いました。
はい。店舗リニューアルに際して最もこだわったのが“働く者にやさしい調理場”を作ることでした。一般的に、この業界の労働条件は厳しいです。私の店も例外ではありません。経営者としては、その労働条件を少しでも改善してあげたいという気持ちがあります。本来ならば労働時間を減らすことが一番良い改善策なのでしょうが、現実的にはとても難しいことです。それで、せめて長時間働いても疲れやストレスが溜まらない調理場を提供したい、と考えるようになりました。
具体的にはどのような工夫をされたのですか?
私どもの50坪ある調理場の土間の下には、6トンもの活性炭が埋められています。活性炭を土に混ぜることで、湿気が発生しにくくなります。また、調理場の床には、2センチ厚の焼き物を敷きました。この結果、同じ8時間の労働でも身体が感じる疲労が以前よりも減少されたと従業員から聞いております。
料理は人が作るわけですから、作る人が元気じゃないと美味しいものは作れません。例えば私の店では、従業員が風邪をひくとすぐに休ませます。無理をして働いて倒れてしまったり、他の人に病気を移したりするほうが大変ですから。仕事を頑張ることは大切ですけれど、我慢はよくありません。事業所側も、そういった心遣いをしてやらないといけませんね。
和光菴では、たくさんの卒業生が活躍されていますね。昔と比べて、最近の若い世代の料理に対する姿勢に変化はありますか?
料理に対する姿勢は今も昔も変わりません。ただ、全般的に体力面、精神面で若干弱くなっているように感じます。だから、料理人を志す後輩達の受け皿である事業所は、多少ハードルを下げて接するべきだと思います。働き始めの半年間だけでもそのような気持ちを持って接すれば、店をすぐに辞めるということにはならないでしょう。「うちの職場は厳しいぞ」と自慢する人が時々見受けられますが、その考えは改めないといけませんね。確かに、修行が厳しいのは当然かもしれません。しかし、厳しい中にも喜びを与えないと、仕事に打ち込めませんよ。
後輩に向けてのメッセージをお願いします。
職場では従業員同士心が繋がっても、仲良しクラブではありません。先輩も同期も全員がライバルだという意識を持って仕事に取り組んでください。また、独立を焦らず、基礎をしっかりと身につけてください。基礎を身につけることは、料理人としての土台を築き上げることです。土台がしっかりとしていれば、自然と素晴らしい料理が作れるようになりますし、料理のアイディアも持続的に生み出されることでしょう。
最後に、平井先生にとってのこの仕事の魅力を教えてください。
各段階によって異なった魅力がありましたね。修行当初は、1つ1つ仕事を身につけ、任されていくことに喜びや充実を感じました。料理長の時は、不安とプレッシャーのなかで作った献立をお客様が食べて美味しいと言ってくれた時が嬉しかったですよね。現在は経営者として、人を育てることに魅力を感じています。一人前に成長して和光菴を巣立っていく従業員の姿を見ることが何よりも嬉しいです。また、お盆やお歳暮のシーズンになると、以前の従業員が家族を連れて店に食べに来てくれます。年末にはお節料理の制作を手助けしにきてくれるので、調理場の人数が50人にもなることがあります。和光菴を巣立った従業員が再び立ち寄ってくれる時に、この仕事を通じて従業員と心の繋がりを持つことができたと実感します。
和光菴 |
住所 |
〒543-0073 大阪市天王寺区生玉寺町3-32 |
最寄り駅 |
地下鉄谷町線四天王寺前夕陽ヶ丘駅
2号出入口 北へ徒歩3分 |
電話 |
06-6774-8090 |
FAX |
06-6774-8122 |
URL |
http://www.wakouan.co.jp/ |
営業時間 |
昼席 11:30〜14:30
夜席 17:00〜22:00
(日曜・祝日は12:00〜) |
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