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高校3年の後半ですね。自分が大学へ進もうかと思っていた頃に周りの大学生とか見てたら、自分の目にはあまりいいようにはうつらなかったんですよ。最初は必ずしも料理とは思っていなかったんです。うちの高校は一応進学校なので3学期になると授業に出なくてもいいんですよ。それでその時間を利用して外国へ一人で出かけたんです。ユースホステルなんか転々としながらぶらぶらしていたんですけれど、この旅行を通じて、料理をしていれば世界中どこでも使いものになるなって思ったんです。 Q:最初から日本料理と決めていたのですか? もともとはフランス料理の方に行きたかったんですよ。幼馴染の友達がもともとイタリア料理をやりたくて、フランス料理専門カレッジへ行くと決めてまして、僕の性格としてそいつと一緒は嫌だったんですよ。別に譲ったってわけじゃないんですけれどね。それとなんとなく日本料理のほうが自分の身体に合うと思ったんですよ。それにこんなん言うたらやっている人に悪いんですけれどたとえばイタリア人はもう生まれたときからイタリア料理を、フランス人は生まれたときからフランス料理を食べているわけじゃないですか。そんな連中にはかなわんな、とも思いました。 Q:この店に入ることになった経緯をかんたんに教えてください。 1年次にはまったく就職活動をしなかったんですよ。調理技研への進学もぎりぎりで決めましたから。後1年ぐらい遊びたかったのかも知れませんね(笑)。それで調理技研の時にこの店にバイトでお世話になったんです。バイトで一生懸命やってたら就職の可能性もあるかもしれんしな、って先生に言われてもう必死でやってましたね。楽しかったですし。「たかがバイト」という考えではやっていなかったですね。 Q:勤務時間と現在の仕事を教えてください。 朝の8時ぐらいから夜は11時半ぐらいですね。最近、担当させていただくようになったのは「八寸」です。入って1年目は「追廻し」ですね。 Q:カウンターでの仕事はいかがですか? お客さんの反応がダイレクトに見えるのと毎日変化があるのはいいですね。そのへんがやっぱりやりがいのある仕事だなって思いますね。でも、実は今の僕の状態ではお客さんの顔の表情なんかをさっと見てとるという余裕はありません。お客さんに料理をお出しするときは緊張しますから。最初は足が震えましたからね。 Q:この仕事していてもっとも充実感を感じるときってどんなときですか? 上の人に誉められるのが一番嬉しいですよね。それとちょっと自分がこっそり勉強したことを聞かれてさっと答えられたりしたときはめちゃ嬉しいですね。 Q:この店を辞めようと思ったことはありますか? ありません。まったくないです。そんなんだったらバイトさせてもらってまで入ろうとしません。 Q:毎日、仕事するのは楽しいですか? 楽しい、って言ったら嘘でしょ。本音の話、朝おきて「つらいなぁ」とか「もう月曜日や」とか思ったりするんですよ。でも、お店に入って、白衣を着たら自分を変えます。それが仕事ですから。結局料理が好きなんだなって思いますね。ちょっとくさいですけれど、僕は好きな人につくってあげるという気持ちで料理をつくれたらいいなって思うんですね。恋人でも、おばあちゃんでも今日しか会えない親でも、好きな人につくってあげるような料理を心がけたいなって。そんな気持ちをもてたらすごいなって思いますね。 Q:将来の夢は? 僕、絶対それ聞かれると思って昨日眠れなかったんですよ。自分の店を持つとか、板長になるとか、一旗あげてやるとか、そういうのがまったくないんですよ。「俺の料理をつくってみんなに食べてもらいたい」とかもないんですよ。たまに会うカレッジの仲間なんかは「俺、こんな店やって、こんな料理出したい」っていうやつがほとんどなんですよ。僕からしたら「こいつら俺と同じ年のくせに、めっちゃすごいな」って思います。そんな時は少し焦りますけれど、きっと今だからないと思うんですよ。ひょっとしたら自分が頑張った後にそういう気持ちが出てくるのでは、と自分に言い聞かせています。 Q:後輩へのアドバイスは? そんなものないです。アドバイスなんておそれ多いですよ。アドバイスなんて出せる身じゃないですからね。謙遜とかじゃなくて本当にそう思います。
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