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蟹醸橙

陽澄湖の蟹漁
大閘蟹を捕獲する網は、一度入ると出られない仕掛けになっている。因みに、大閘蟹の「閘」は方言で「ザァ」の代用文字。ゆでるという意味である。

上海・銅川水産市場
上海市の銅川路896号にある上海最大の水産卸売市場。市場を二つに分ける道は別名“蟹通り”といわれ、シーズンになると上海蟹の売買でごった返す。

精進料理「炒素蟹粉」
鑑真和尚ゆかりの寺、揚州にある大明寺の「大明寺素齋」で作られたもの。もどき料理の中では色、香り、味、形のいずれも秀逸である。
   秋が深まると上海蟹の季節である。
 中国では旧暦で「九月団臍十月尖」といい、秋風の吹く頃は、卵 ―蟹黄(シェホァン)― を持った雌(腹部が丸いので団臍という)が美味しく、さらに寒くなると雄(腹部が尖っている)が肥り、脂ものってくる。私見では、新暦の12月頃に出回る大きな雄蟹(400g前後)に醍醐味を感じる。半透明でむっちりした白子 ―蟹膏(シェガオ)― がたっぷり詰まり、これを肝臓などのミソ ―蟹油(シェヨウ)― と一緒に混ぜて食べると、上海蟹の世界がさらに広がり、至福の時間(とき)が刻まれる。
 上海蟹は、中国江蘇省などの海岸に近い湖、河川に多く生息する中華絨螯蟹(シナモクズガニ)のことで、一般的には(パンシェ)、湖蟹(フゥシェ)、河蟹(ホーシェ)などという。その中で、特定の湖に生息する良質の蟹だけを通称、「大閘蟹(ダァヂァシェ)」と呼ぶ。大閘蟹は、蘇州に近い陽澄湖産が最も有名で最高級のブランド品となっている。因みに、大閘蟹は上海が最大のマーケットであり、一大集散地として日本にも運ばれるので、これを上海蟹というわけである。
 陽澄湖は水質がよく、エサが豊富で蟹の成長が速く、湖底が岩盤で泥が少ないので、臭みもなく、味がよいとされる。一方、水質の悪い湖の蟹は、エラの部分が緑色で臭みがある。素人が一瞥して上海蟹の産地を判断するのは難しいが、陽澄湖の蟹は甲羅が青っぽく、浅黒い、そして腹部が白く、脚の毛、爪が金色を帯びている。小売市場では、陽澄湖産を証明する白いプラスチチックのタグが爪に掛けられるなど、他の湖(太湖など)のものと区別されており、価格も二、三割ほど高くなる。
 さて、上海蟹を使った古典的な名菜で、起源が宋代まで遡るという「蟹醸橙」を紹介しよう。この料理は、南宋時代の食経『山家清供(さんかせいきょう)』に、橙(ユズ)の大きなものを繰り抜き、この中に蟹のミソと肉を詰めて蒸すと載っており、香りがよい上に、さっぱりとしていて季節の新酒、菊の花、ユズ、蟹の味が一度に楽しめるとある。近年、杭州の料理店では蟹肉、卵、ミソを炒めてオレンジに詰めて蒸すという現代版の「蟹醸橙」を復活させた。オレンジの風味と甘みは欧米的ではあるが、古(いにしえ)の味を彷彿させる。
 蛇足だが、蟹肉、卵、ミソを一緒に炒めた料理は「清炒蟹粉(チンチャオシェフェン)」 といい、これを蟹の甲羅に詰め、卵白を飾って蒸す「雪花蟹闘(シュエホアシェドウ)」は華やかな一品として知られ、煎り焼いた麺の上にかけた「蟹粉炒麺(シェフェンチャオミェン)」は大変贅沢な焼きソバといえる。また、上海など江南地方の精進料理店には、ジャガイモ、ニンジン、シイタケなどを使った「炒素蟹粉(チャオスゥシェフェン)」という料理があって、色合いといい、食感、風味など不思議なくらい蟹の味に似ている。これなら懐を気にせず、家でも作れるだろう。

●蟹醸橙シェニァンチョン
(上海蟹のオレンジ詰め蒸し)

 上海蟹は陽澄湖産の大閘蟹にこだわる必要はないが、雌雄を混ぜて使うと風味がよい。オレンジは形のよいものを選び、酸味の強いものは避けること。なお、蓋になる部分からカットし、果肉、果汁を取り出すが、表皮だけを残して中をきれいに抜くと、蒸したときに崩れやすく、苦味が出るので注意する。この料理のベースとなる「清炒蟹粉」は、蟹肉を手早く炒め香りを出し、スープを加えて少し煮た後、オレンジ果汁を加え、すぐに仕上げること。果汁を加えて長く煮ると風味が損なわれる。蒸すとオレンジと器の周囲に水分が溜まるが、強い苦味があるので口にしないこと。渡り蟹(ガザミ)などで作るのも一興である。


 
(1) 大閘蟹の雄(左奥)、雌(右手前)。

 
(2) 太湖産(左側)と陽澄湖(右側・タグ付き)。
 
(3) 蟹は甲羅を持たずに、脚を持つと挟まれない。

 
(4) 爪を腹部に折り曲げ、脚、爪を縛り、最後は十字形に縛る。
 
(5) 太湖産(左)、陽澄湖産(右)の雌を蒸した状態。
 
(6)  蒸し蟹は爪、脚を切り、半分に切って肉、ミソなどを取る。

 
 
(7) オレンジは蓋にする部分を切り、果肉、果汁を出す。

 
(8)  蟹肉を炒め、紹興酒、黒酢で風味をつける。 
 
(9) 炒めた蟹肉をオレンジに詰める。
 
(10)  セロファンで包み、オレンジが熱くなるまで蒸す。 

 


■作り方
1. 上海蟹は雌雄、産地、大きさを選別する。(写真1、2)
*雌150〜180g、雄200〜240gの大きさを使用した。

2. 蟹を水洗いして蒸す。
<1>蟹は紐をはずし、脚を持つ。(写真3)
<2>腹側の臍(俗にフンドシという)を広げて水洗いし、爪の毛などもきれいに洗う。
<3>再び紐で蟹を縛る。(写真4)
<4>強火で一気に蒸す。
*蟹は蒸す前に水洗いする。蒸し時間は、200gの大きさで約15分、20gの増減で±約1分間を目安にする。また、甲羅を下にして蒸すと脂肪分の流失が防げる。

3. 蒸した蟹は、臍を取り、甲羅をはがし、爪を取る。(写真5)

4. 蟹は脚の先を切り落とし、胴体を半分に切り、蟹肉、卵、ミソを取り出す。(写真6)

5. オレンジは蓋になる部分(上部1/3のところ)から切り込みを入れ、中の果肉、果汁を取り出す。(写真7)
*オレンジの皮の内側についている薄皮は少し残して繰り抜くこと。特に底の部分は厚めに残すようにすると崩れにくい。

6. 鍋を空焼きして油ならしし、油大さじ1を入れてショウガを炒める。香りが出れば蟹肉、卵、ミソを入れて炒め、すぐに紹興酒、黒酢を入れる。(写真8)

7. (6)にスープ、砂糖、塩を入れて味をととのえ、オレンジの果肉と果汁を入れ、軽く沸騰すれば水溶き片栗粉でとろみをつけ、油小さじ1を落とす。
*水溶き片栗粉で少し強いとろみをつけると、蒸したときに水っぽくならない。

8. 器にオレンジを
のせ、その中に(7)を詰める。(写真9)

9. 蓋をしてセロファンで器ごと包み、紐で縛って7〜8分間強火で蒸す。(写真10)

10. そのまま食卓に出し、セロファンをはずしてチリレンゲでいただく。好みで黒酢をかけてもよい。  




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