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海外からのレポート fromドイツ
<経歴> 
1967年11月21日  大阪生まれ
1986年4月〜1987年3月 大阪あべの辻調理師専門学校在学
1987年4月〜9月 同校フランス校在学
1987年10月〜1988年10月 ビストロ・ド・ペリゴール(フランス料理)[兵庫県西宮市] 勤務
1988年10月〜1991年7月 レストラン サントリー インターナショナル
 「鉄板焼 リオ」店 [大阪] 勤務
1991年9月〜2002年8月 キッコーマン レストラン 大都会 [ドイツ]勤務
 ・ケルン店−3年間
 ・ベルリン店−3年間 (副料理長)
 ・デュッセルドルフ店−1年間 (料理長代行)
 ・ミュンヘン店−1年半 (料理長)
 ・Sushi DUKE(デューク)店−2年半 (料理長兼務)
2002年9月〜 レストラン TOSHI Sushi & Pacific Food [ミュンヘン] 開業
オーナーシェフ
2006年6月〜 レストランの隣接に、TOSHI Bar 拡張オープン
 
 これまでの私のドイツでの滞在経験を通じて料理人としての目線で気づいたことを思いつくままに書いてみました。業界関係者皆様の少しでも関心をひくことができればと思います。
一般的なドイツの説明は専門のガイドブックをご参照ください(笑)。


■ドイツでの開業とレストラン『TOSHI Sushi & Pacific Food』■
 
 渡独してレストランで働きながら、いつかはここドイツで自分の店を持ちたいと考えていました。この夢を持ち続け、技術や知識、ドイツ語などに磨きをかけながら開業許可状を取得するべく滞在年数を重ねました。しかし、失業率が10%を超えるこの国で外国人が開業することは決して簡単なことではありません。様々な条件を一つずつクリアし、行政から要求される膨大な提出書類を根気よく、真剣に準備した結果、「開業できない理由がない」といういかにもドイツ的とも言える理屈で無事ゴーサインが下りました。
 私の店は、前オーナーがオープン1年目で手放してしまった店をそのまま居抜きで譲り受ける形で開業したのです。そして、買い取るときの条件の一つとして店舗経営に関して急激な変更はしないということがあったのです。こんな経緯で『Sushi & Pacific Food』のロゴは引継ぎましたが、メニューは少しずつオリジナルなものに変更していきました。開店当初はタイ人の料理人もいたので、繊細なタイ料理も数多くメニューに載せていました。
 私の店のコンセプトは店名にあるようにあくまで、寿司とパシフィック・フードです。要は正統派の寿司というよりも、むしろフュージョン料理や創作和風料理を提供したかったので、アジア料理全般に携われるこの方針は、正に自分の目的に適うものでした。良質な食材を使って、美味しい料理と本格的な高級寿司を提供できる店、おしゃれで魅力満載のレストランを目指しています。


■ドイツ寿司物語■
 現在のドイツの外食産業界では和食の浸透が急激にすすんでいます。中でも飛びぬけているのは、なんと言っても“寿司”です。ミュンヘンの中心地、マリエン広場近辺だけを見ても、和食のレストランではもちろんのこと、回転寿司、持ち帰りのパック寿司販売店、デパートの地下食品売り場、宅配寿司屋などいたるところで寿司を買うことができます。大きなスーパーマーケットでは既製品の握り寿司がそのまま冷凍食品として箱入りで売られている状況です。しかし、風味の水準は店それぞれなので、初めて寿司を食べるドイツ人が怪しい寿司を食べてしまい、その結果寿司嫌いにならないでもらいたいものだと願っている次第です。
 ドイツでは魚の苦手な人は野菜の寿司を注文し、好みで肉やチーズなどの食材も使います。外国で生まれた裏巻き寿司は、のりが内側に入って表面には色のきれいなトビコや健康的なゴマをまぶすので見た目に美しく、人気のあるアイテムのひとつとなっています。一般的にドイツ人は濃い風味を好むらしく、醤油はたっぷりとつけ、ガリの分量も多いのが普通だと言えます。
ここで少し平均的ドイツ人の食生活について語ってみましょう。


■ドイツ人の食生活 その一■
 日本人のご飯の位置(ほぼ毎日食するという意味で)にあたるものはよく言われるようにジャガイモではなくパンだと思います。ジャガイモは何日も食べないことはありますが、パンを全く食べないという日はまずないと言えるのではないでしょうか。町中いたるところにあるパン屋は早朝6時から営業しています。種類も豊富で滋味深いパンの数々は原料も小麦粉はもちろん、全粒粉やライ麦、ひまわりやカボチャの種などいろいろな素材を組み合わせて、各店独自のレシピで焼き上げます。噛み応えのある食感、味わいの深さ、気に入った店を見つけたらつい毎日通ってしまう気持ちも理解できます。
 いわゆる菓子パンではないので、日本ではあまり見かけない風景ですが、ここドイツではパンを食べ歩きしている人たちを頻繁に目にすることができます。老若男女、実によくパンを齧りながら歩いています。小学生にいたってはおやつとして必ずパンを持参し、休憩時間に食べるのです。いかにパンが日常の食生活にとって欠かせないものかを垣間見ることができると思います。


■ドイツ人の食生活 その二■
 ドイツ人の伝統的な日常の食生活は、朝と夜は各種パンとハム、チーズ、そして飲み物などの簡単な内容で、昼食にたっぷりととるというのが一般的なようです。
 週末は手作りのケーキ(日本風の生クリーム系のものではなく、季節の果物や新鮮なバターを使った素朴な焼き菓子が主流)に、コーヒーで休日のひと時を楽しみます。もし、季節が夏であれば野外でのバーベーキューが大人気で、スーパーのチラシにバーベーキュー用品や味付けされた肉などの売り出しが大々的に掲載されると「夏」の到来を感じ、ひとつの風物詩と言えるかも知れません。
 食事のメインディッシュは、豚肉なら骨付きのすね肉をオーブンで焼いたり、塩ゆでしたものが最も多いようです。他には豚肉カツレツや合挽き肉のハンバーグなどもあります。魚なら皮をとって(残念ながら普通皮は食べてもらえません)バターでソテーしたり、フライにして食するのが一般的です。すべて量が多く、風味は濃い目(ビールがすすむ!)ですが、いずれもなかなか美味しい料理です。
 ドイツといえばビール。会社勤めの人たちでも、昼食時にビールを飲むことは珍しくありません。日本各地に地酒があるように、ドイツのビールもさまざまな土地でその土地ならではの地ビール(?)が作られています。有名なビール祭りのオクトーバーフェストでは、1Lのビールジョッキで乾杯する姿が会場のいたるところで見られます。ビール以外でも多く飲まれているのはコーヒーです。昨今はエスプレッソが大衆化し、カプチーノやラッテマッキャートなど味わい深いイタリア風のコーヒーハウス(薄いアメリカンコーヒーは見当たらず)が、寿司屋に匹敵する勢いで続々とオープンしています。
このようなドイツ人の食生活を支えている食材にはどのようなものがあるのでしょう。
 


■食材■
 長い冬が終わり、春がやってきます。この季節ドイツ人にとってなくはならない食材は何といっても白アスパラガスです。掘りたての新鮮な白アスパラガスは、皮をむいて茹でて食べるのが一般的です。ホワイトアスパラガスを食べて春の到来を実感するのです。初夏になるとサクランボ、桃、杏、プラム、ネクタリン、葡萄(皮ごと食べられます)、ジャム用のルバーブやサラダ用のチコリ、トレビス、赤・黄・緑の大きなピーマンやズッキーニなどなど色とりどりの野菜や果物が次々に市場に並べられます。秋に、胡桃やへーゼルナッツの木の実類、きのこ類、洋ナシやリンゴ各種に柑橘類と色合いも秋っぽくなってきます。12月になると鹿や雁、野ウサギなどのジビエも続々と登場してきます。伝統的な料理には欠かせない新鮮な香草(ローズマリー、タイム、セージ、バジル)もヨーロッパ各地から直送で、しかも低価格で手に入るのは嬉しい限りです。
 寿司の食材としては、地中海からはマグロ(良質のものはほとんどが築地に直行します)が、アイルランドやスコットランド地域からは鮭(市場に流通しているノルーウェー産は脂がのりすぎている気がします)が、はたまたアジアからはブラックタイガー海老などが入ってきます。 日本で好まれる霜降り牛肉も最近では需要も増え、高級ホテルの特別メニューで登場しています。“神戸ビーフ”が代名詞となり、ドイツ内でもこの品種の飼育が始まりました。


■少しだけカルチャーの話■
 ドイツは9カ国と隣接していることもあり、様々な国籍の人が住んでいます。そのような地理的な条件と文化的背景のためか、外国人に対する偏見があまりないように感じます。アジア人の私たちも道端で気軽に話し掛けられたりします。最近では当たり前のように感じていますが、来たばかりの頃は不思議でした。
 病院で医者と患者が対等に接することにも驚きました。初診の患者には医者は必ず最初に自分の名前を名乗り、握手を求めてきます。ドイツ人に言わせるとなぜ驚くのかが不思議だそうですが、日本では高慢な医者と萎縮した患者というイメージがありましたのでやはり驚かずにはいられません。
 厨房での仕事を見ていると、日本人の新人は先輩の指示に対して、わからなくても「はい」と返事してしまい、聞き返したり質問しようとしないことに違和感を感じてしまいます。日本の封建的な上下関係を考えると常に「はい」になってしまうのかもしれませんが、ドイツでは全く通用しません。「JA(ヤー=はい)」か「NEIN(ナイン=いいえ)」は重大な違いですので、それを曖昧に答えられては話にならないのです。

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