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コラム&レシピ
セパージュを飲む

 ブルゴーニュ地方南部にあるボジョレー地区の赤ワインが、すべてこの葡萄からつくられている。
 
その他の地方や国でも栽培されていないことはないが、とりたてて見るべきものはない。
 ガメから素晴らしいワインを生み出しているのは、ボジョレーだけだといっても過言ではないと思う。
 したがって、この品種の解説は、そのままボジョレー地区の解説になる。
 この地区のワインは、イチゴやラズベリーなどの赤い果実の香りと、バラやスミレを思わせる華やかな香り、そして、軽やかでフレッシュかつフルーティな風味を特徴としており、一般の赤ワインにある「渋み」もほとんどないため、赤ワイン初心者にも問題なくお奨めできる。
 日本では、ボジョレー・ヌーヴォーが特に有名で、毎年11月の第三木曜日の解禁日には、一種のお祭のような騒ぎになる。ヌーヴォーは、通常のボジョレーとは違って、マセラシオン・カルボニック法(炭酸ガス浸漬法=房をつぶさないまま丸ごと密閉タンクに入れ、炭酸ガスを吹き込んで数日間置いておく方法)という独特の醸造法を使っている。この方法をとると、若いワインに特有の酸味の鋭いリンゴ酸の一部が粒の中で分解され、(熟成を経なくても)飲みやすい味になり、皮の細胞が壊れて色素や香りの成分が溶け出しやすくなり、同時にドロップを思わせる甘い香りが漂うようになる。
 ただし、あまりに長くこの状態を保つと、それこそドロップの香りばかりが支配的な爽やかさに欠けるワインに成り下がりやすいので、通常は数日間炭酸ガスに浸したら、さっさと絞ってしまい、赤い色がしっかりついた果汁を得、以後は白ワインと同様に低温で香りを大切にしながら発酵させてワインに仕上げることになる。
 一方、一般のボジョレーは、開放式のタンクに房をつぶさないままの葡萄を入れて、自然に発酵が始まるのを待つという、伝統的な醸造法をとる。房の重みでつぶれた果汁が発酵を始めると、上の方にある房は、発酵で生じた炭酸ガスに覆われ、一種のマセラシオン・カルボニック状態になるのだが、その後、下部の房からつぶれていくため、最終的には、すべての房が液体の中に漬かった状態で発酵が進められることになる。マセラシオン・カルボニックの期間が短いためドロップの香りは少なめだが、発酵中の果汁が皮に接触している期間が長いため、色も香りもしっかりと抽出されることになる。
 ただし、この状態で最後まで発酵が続けられることは、めったになく、ヌーヴォー同様に途中で圧搾が行なわれ、以後は白と同様の醸造法がとられる。
 通常のボジョレーでは、普通5日間ほどで絞り、一格上のボジョレー・ヴィラージュでは数日伸び、さらに上級品になるにつれて、この漬け込み期間が長くなっていく。最上級のムーラン・ナ・ヴァンの場合には、発酵終了まで、房が漬け込まれたままという場合もある。漬け込み期間が長くなるほど、色も濃くなり、味わいにも深みが出るわけだが、葡萄自体に力がないと、ボジョレー本来の魅力であるチャーミングな果実味がかえって覆われてしまうことになりかねないので、そのあたりの匙加減が難しいのである。
 
ボジョレー
(ジョルジュ・デュブッフ社)

フレッシュで生き生きした味わいの典型的なボジョレー。赤い果実や花の香利が心地よく、味わいは軽やかで、きめ細かく、フルーティ。軽く冷やして楽しみたい。
ボジョレー・ヴィラージュ
(ジョルジュ・デュブッフ社)  

「ヴィラージュ地区」でつくられた一格上の芳醇なボジョレー。生き生きとしたフルーティさの中にも、心地よい深みが感じ取れるはずだ。
 さて、ボジョレー地区は、大きくわけて南部のシンプル・ボジョレーと、北部38ケ村からなる一格上のボジョレー・ヴィラージュ、そしてさらに上級品の10の村名ワインに分けられる。
 南北で最も大きな違いは、土壌である。
 南部は鉄分の多い粘土質土壌で、北部は花崗岩の風化土壌が中心になる。さらに上級の10の村では、花崗岩の質がさらに細かく変化していく。
 北から順に特徴を見ていくと、サンタムールの村では、花崗岩はオレンジがかったベージュ色をしており、熟した桃の香りが特徴の優しい味わいのワインが生まれる。
 ジュリエナ村の土壌には、花崗岩だけでなく結晶片岩がまじっていて、凝縮された果実の風味の中にスパイシーな香りがまじるのは、そのためだと言われている。
 シェナ村は、かすかにマンガンが混じった黒に近い花崗岩の風化土壌で、ほのかにバラの香りが漂う心地よいワインが生まれる。
 ムーラン・ナ・ヴァン村は、マンガンが豊富に含まれている真紅に近いバラ色の花崗岩に覆われており、華麗なバラの香りと、深く芳醇な口当たりを誇るワインが生まれる。一般に、この村のワインこそが、ボジョレーの頂点だと考えられており、また、この村では、ボジョレー地区では珍しく、オークの小樽を使った熟成も行われるため、そのようなワインでは、ココアやチョコレートなどを思わせる甘い樽香も加わって、「別格」というイメージをさらに際立たせている。
(ちなみに、ムーラン・ナ・ヴァン以外の村では、大樽熟成が一般的である)。
 次のフルーリー村の土壌は、マンガンの影響のまったくない黒っぽい花崗岩で、「花」という名前の通り、ユリやアイリスの甘い香りが漂う優雅なワインが生まれる。
 シルーブル村の土は、フルーリーとほぼ同じだが、多少黒味が強く、スミレの香りのする華やかなワインが生まれる。
 モルゴン村は、グレーの結晶片岩の風化土壌で、ミネラル分の豊かな、力強く、しかも繊細なワインが生まれる。
 レニエ村は、花崗岩が風化した砂と砂利に、粘土がまじった栗色の土が特徴で、10ケ村中最も軽やかでチャーミングなワインが生まれる。
 ブルーイィ村の土はシルーブルに似ているが、なぜかスミレというよりも、ラズベリーのようなフルーティで華やかな香りのするワインになる。
 コート・ド・ブルーイィ村は、ブルーイィの中心に位置する丘にあり、青みがかった斑岩からなり、新鮮な葡萄そのままのようなフレッシュな香りと、しっかりした深みが調和したワインが生まれる。
 ちなみに、一番高いムーラン・ナ・ヴァンでも通常2000円前後で手に入るので、ボジョレー、ボジョレー・ヴィラージュだけではなく、ぜひ、この10カ村の飲み比べを、お試しいただきたいと思う。
 土地の違いを純粋に見比べるためには、出来れば、同じつくり手のワインで試したほうがいいということは、言うまでもない。
 「ボジョレーの帝王」として知られるジョルジュ・デュブッフ社のものなら、日本でも手軽に手に入れることができるので、まずは、そのあたりがお勧めである。


山田 健(やまだ たけし)
1955年生まれ。78年東京大学文学部卒。
某洋酒会社が刊行している「世界のワインカタログ」編集長。
86年に就任して以来、世界中の醸造所めぐりをし、
年間2000種類以上のワインを飲みまくる。
著書に「今日からちょっとワイン通」「バラに守られたワイン畑」(共に草思社)
「現代ワインの挑戦者たち」(新潮社)他がある。
辻調おいしいネット「コラム&レシピ」内の
『今日は何飲む?』というコラムにて、
「今日は何飲む?」野次馬隊リーダーとして参加。

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