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コラム&レシピ
セパージュを飲む
昨今、とみに日常生活に入り込んできた感のあるワイン。ワインの風味はさまざまな要因で決まります。これら諸要因の中でもそのベースとなるものはやはり原材料のブドウの品種、すなわちセパージュではないでしょうか。そこでこの<セパージュを飲む>では代表的なセパージュの風味を通じてワインに近づいてみたいと思います。

vol.1 シャルドネ種(後編)

 樽の使い方も、大きな影響を与える。
 10年ほど前までは、シャルドネの特長として、しばしば「あぶったナッツや、ヴァニラの風味」という解説をよく見かけたが、これは別にシャルドネの特長ではなく、単なる樽香にすぎない。ただし、樽に由来するその手の香りとの相性では、シャルドネという葡萄は白ワインのなかでも群を抜いている。
 もっとも、個人的な見解を言うと、樽との相性が良くなるのは、コート・ドールよりも南に下ってからで、北のシャブリでは、それほどでもないように思う。
 シャブリでは伝統的に132リットルの「古樽」か、反対に数千リットルの「大樽」による熟成が行われてきたため、樽香は「ほのかに漂う」くらいがちょうどよいとされてきた。
 その後、1960年代にいっそのこと樽を一切使わずにステンレスタンクでクリーンな果実味をストレートに出そうという流れが生まれ、さらに後には、多分地球の温暖化のために、実が異常に熟すようになったからだろう。特級と1級の畑では、南のコート・ドールと同じ228リットルの小樽(それも多くの場合、新樽)に寝かす方法が流行し始めた。
 しかし、結論を言ってしまうと、そうした樽香の強いシャブリは、コート・ドールの例えば、「ピュリニー・モンラッシェ」や「ムルソー」などに比べて、コストパフォーマンスが非常に悪く、味わい的にも中途半端なものにしかならなかった。今では、たとえ小樽を使う醸造元でも、あまりにも強い新樽香はさける方向になりつつある。
 コート・ドール以南では、新樽の割合いは、葡萄の凝縮味にそのままスライドさせる傾向がある。素晴らしい葡萄がとれた時、あるいは、とれるに決まっている畑の場合には、新樽を多用して、贅沢な樽香をつけ、全体のバランスをとるわけだ。
 もうひとつ、樽の使い方で特記しておかなければならないのは、「バトナージュ」である。
 絞った果汁をいきなり小樽のなかに入れ、発酵そのものを小樽で行い、発酵がすんでもしばらくは酵母をオリ引きせずに沈めておき、週に2・3回くらいの割合で棒でかき混ぜ、死んだ酵母から核酸やアミノ酸などのウマミ成分を溶け出させるという醸造法である(棒=バトンでかき混ぜるところからバトナージュと呼ばれている)。
 この方法でつくったワインには、特有の厚みと、それから、どういう訳か理由は分からないのだけれど、トロピカル系の香りが立ち昇る傾向がある。
「気温による香りの変化」のところで、アンズから桃に移る途中に「パイナップル、マンゴー」という項目を入れておいたのだけれど、この手のトロピカル系の香りは、気候だけではなく、バトナージュという手法と組み合わせた時に初めて誕生するように思う。
 さて、ここまで、解説を「本場」のシャンパーニュとブルゴーニュのみに限ってきてしまったが、それ以外の土地のシャルドネも、基本的には、いままで説明した「本場」での特長を手本にし、その特長にむかって「追いつこうと努力」したり、あるいは、恵まれた気候を生かして、それらの特長を「いっそう誇張」してみたりという方向でつくられていると言って過言ではない。
 もちろん、その「誇張」のなかには、大成功しているものも、すでにたくさんある。
 カリフォルニアやオーストラリア、チリなどには、「本場」では絶対に不可能なほどに力強いワイン、華やかなワイン、個性的なワインも生まれつつある。
 本場とまったく区別のつかないようなワインさえ次々に誕生している。
 ただし、そうしたワインの品質を評価する「尺度」が、相変わらず本場の名品であることだけは、間違いない。
 その証拠に、新世界の醸造家が、自作のシャルドネを自慢する時に、
「モンラッシェを超えた自信があるんだけどね。どう思う?」
「本場のムルソーじゃあ、こんな力強いワインは絶対に出来ないと思うぜ」
 悲しいかな、ついつい、こういう比較級の表現をしてしまうのである。
 本場以外から、シャルドネの新しい「典型」と言いうる、独自の個性をもった味わいが生まれるのは、まだまだ先のような気がする。
サン・ヴェラン キュベ・プレスティージュ
(ドメーヌ・ロジェ・ラサラ)

マコネー地区サン・ヴェラン地域

南の産地ならではの優しい酸味が特長。小樽で発酵させ、定期的に酵母を攪拌(バトナージュ)したワインに特有のトロピカルフルーツを思わせる華やかな香りを典型的に味わえる。
ボンテッラ シャルドネ
(フェッツァー社)

カリフォルニアの有機栽培ワイン

たっぷりと熟したまろやかな果実味は、昼夜の寒暖差の大きいカリフォルニアならではのもの。アメリカンオークの小樽で熟成。ココナッツをあぶったような甘い樽香は、アメリカンオークの特長。
シャルドネ BIN65
(リンデマン社)

オーストラリア産

世界で最も売れているシャルドネ。ヘクタール当たりの収量が多いため、凝縮味はさほどでもないが、ほのかな樽香とのバランスも良くとれていて、とても飲みやすい。価格も1500円程度で、日常飲むにはとてもいい。


山田 健(やまだ たけし)
1955年生まれ。78年東京大学文学部卒。
某洋酒会社が刊行している「世界のワインカタログ」編集長。
86年に就任して以来、世界中の醸造所めぐりをし、
年間2000種類以上のワインを飲みまくる。
著書に「今日からちょっとワイン通」「バラに守られたワイン畑」(共に草思社)
「現代ワインの挑戦者たち」(新潮社)他がある。
辻調おいしいネット「コラム&レシピ」内の
『今日は何飲む?』というコラムにて、
「今日は何飲む?」野次馬隊リーダーとして参加。


■Vol.1「シャルドネ種」前編
■Vol.1「シャルドネ種」後編
■Vol.2「カベルネ・ソーヴィニヨン種」前編
■Vol.2「カベルネ・ソーヴィニヨン種」後編
■Vol.3「ピノ・ノワール種」前編
■Vol.3「ピノ・ノワール種」後編
■Vol.4「メルロ種」前編
■Vol.4「メルロ種」後編
■Vol.5「リースリング」前編
■Vol.5「リースリング」後編
■Vol.6「ソーヴィニヨン・ブラン」前編
■Vol.6「ソーヴィニヨン・ブラン」後編
■Vol.7「シラー」前編
■Vol.7「シラー」後編
■Vol.8「サンジョヴェーゼ」前編
■Vol.8「サンジョヴェーゼ」後編
■Vol.9「甲州」前編
■Vol.9「甲州」後編
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■Vol.19「テンプラニーヨ=ティンタ・ロリス(葡)」
■Vol.20「セミヨン/ミュスカデ」
■Vol.21「ピノ・グリ(ピノ・グリージョ)/トレッビアーノ(ユニ・ブラン)」
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