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日本料理の特徴は。と問い掛けると必ずと言うほど「まずは目で楽しませ、そして食べても美味しい」「季節感を味わうことが醍醐味なので、季節を意識した料理づくりを」などの言葉が出ます。これらは日本料理の特権のように言われますが、実は、日本料理に限ったことではありません。ヨーロッパの料理を代表するフランス料理でも、秋から冬にかけてのジビエや牡蠣などはこの季節を代表する料理として提供され、春の白アスパラガスの登場を待ちわびる気持ちは、日本人が筍を心待ちにするそれと同じでありましょう。季節を意識する料理の多くは、旬の食材を組み合わせて作るのが基本であり、この点においてはまったく日本料理と変わりありません。 |
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しかし、日本料理特有の季節の表現方法は、更に込み入っています。「出会い物」とか「旬の物」と称して、一番盛りの食材を料理の中心に据え、加えて、出盛り前の「走りの物」、盛りを過ぎた「名残りの物」も取り入れつつ、微妙な季節の移ろいを表現するのです。また、材料の切り方を取ってみても、独活をせん切りにする場合、春はぼんやりとした春霞、夏は涼しげな細さを清流にたとえ、秋は七草の一つである「すすきの原」に見立てるなど、目で見える形でも表わそうとします。
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そして、日本料理の料理人が意識せずにはいられないこと、それは、正月や節分また、五節句(人日、上巳、端午、七夕、重陽)などの年中行事です。日本料理では、季節の区切りである節会や祭事、行事に因んで料理を作ることを基本としています。ここでは四月の献立について解説をしましょう。 |
四月は「三見」(花見、月見、雪見)の一つである「花見」に視点を置いた料理です。娯楽が少なかった昔の人々にとって、物見遊山は何よりの楽しみであったことでしょう。気の合った仲間同士が一同に会して御馳走を食べ、酒を呑む姿が思い浮かぶような料理にしました。先ずは弁当箱に彩りよく盛られた酒肴。これは「口取り肴、組み肴、八寸」などと呼ばれ、献立の中では花形の料理です。弁当の語源については、中国南宋時代の俗語「便当」で、日本でも好都合とか便利とかと言う意味の言葉として用いられ、これが変化したという説や、山で仕事をする人々が木を薄くへいだ「へぎ」を丸や楕円に形付けて底、蓋をつけた飯器「面桶」(めんつう)が変化して「べんとう」になったとする説もあります。 |
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竹の皮に金泊を施したものは「光琳笹」といい、江戸時代を代表する絵師・尾形光琳の発案とされます。これには有名な逸話があります。ある時、光琳が諸大名や豪商と花見をしました。皆々が豪華な弁当を持参したにも関わらず、彼の弁当は竹の皮に握り飯を数個包んだだけのものでした。これを見て誰かが「光琳ともあろう人物が場に似合わぬ粗末な……」と酷評したとたん、光琳は食べ終わった竹の皮を川面にポイと投げ捨てました。その竹の皮には見事な漆絵が施されており、一同「さすがは光琳」と感嘆したとか。この話に因んで、今回花見の料理に用いました。
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