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コラム&レシピ
セパージュを飲む

 フランスのアルザス地方で、リースリング種と双璧を競っている名葡萄である。
 ゲヴュルツとは「スパイス」「香辛料」という意味のドイツ語だが、この葡萄の個性を表現するためには、「スパイシーな」というよりも、「華麗な香りの」というくらいの形容の方が正しいように思う。
 成功したゲヴュルツトラミナーのワインは、はっきりとしたライチとバラの華やかな香りをもつ。特にライチの香りは特徴的で、没個性な安物白ワインにライチ・リキュールを垂らすと、たいていのひとがゲヴュルツトラミナーと間違える変てこりんなカクテルが出来上がるくらいである。
 ちなみに、この葡萄からのワインは、「つくり」に失敗すると、どういうわけか、焼き芋の皮の内側を思わせるような、蒸れた感じの甘い匂いになってしまう。それはそれで、決して不快ではないのだけれど、一般の人が白ワインに求める「爽やかな」イメージからは程遠いものになるのは言うまでもない。
 この葡萄は、もともとイタリアのトラミン村原産といわれるトラミナー種の緑の皮が、突然変異でピンク色に変わって誕生した品種とされており、果皮がピンクの葡萄にしばしば見られる共通の特徴として、酸味が穏やかすぎるほど穏やかに熟す傾向がある。
 ただし、酸以外の成分は、通常たっぷりとのり、糖度も非常に高く熟す――ということは、どちらかというと、どっしりとしたフルボディタイプのワインになりやすいということだ。
 香りも強烈、酸味も穏やか、味わいはどっしり系ということで、どちらかというと、好き嫌いがくっきりと分かれるワインだと言っていいだろう。
 個人的にも、いつも飲みたいワインではないが、年に何回か、無性に飲みたくなることがある。
 そういう意味では「クセになる」ような、一種独特な魅力のある葡萄だと言っていい。
 料理との相性は難しい。
 フランスでは、「ゲヴュルツ」=「スパイシー」という名前を文字通りの意味に解釈したのだろうか、ほのかに甘味のあるタイプのものを、インド料理屋やエスニック系のレストランでよく見かけるが、どう考えても合うとは思えない。そういう料理の場合には、なにも無理してワインを飲まなくてもいいのではないかと思うこともある。
 アルザス地方の、いい年のヴァンダンジュ・タルティブ(遅摘み)――つまり貴腐あるいは貴腐まじりの葡萄からの甘口ワインは、しばしば「偉大」という形容詞がふさわしいほどの絶品になり、他の貴腐ワインと同様の楽しみ方ができる。つまり、フォアグラやブルーチーズなどと、絶妙に合うということだ。
 贅沢な食事の後に、単独でしみじみと味わうのもいい。体中の細胞のすみずみにまで、バラの香りが染み渡っていくような、独特の酔いを楽しむことが出来るだろう。
 
●ドメーヌ・ヴァインバック キュベ・テオ
 ゲヴュルツトラミナー


アルザスを代表する名醸造所によるほのかな甘口タイプ。ヴァインバックとは「ワインの小川」という意味。テオは、この醸造所の名声を高めた先代テオ・ファレール氏の名前である。バラとライチ、蜂蜜の香りが爆発的なまでに強烈に香りたつが、口に含むと意外なほどに穏やかで、後味もスッキリしている。ただし、酸味は少ないので、けっして爽やかなタイプではない。つまり、この品種のまさに「典型」で、人による好き嫌いが見事にくっきりと分かれるも、この品種の「典型」ならではと言っていいだろう。
●ヒューゲル ゲヴュルツトラミナー
 ヴァンダンジュ・タルティヴ


ヒューゲルも、アルザスで最高の醸造元のひとつ。ヴァンダンジュ・タルテゥヴとは「遅摘み」という意味。貴腐まじりの葡萄からつくられているため、品種特有のライチの香りは後退し、蜂蜜の風味が前面に出てきている。ふっくらとしたグラマラスな甘口で、こういうワインを10年ほど寝かせておけば、誰もが単純に「おいしい」と納得する味わいに熟成してくれるものである。食前酒としても、食後のデザートワインとしても、心地よく楽しめる。


山田 健(やまだ たけし)
1955年生まれ。78年東京大学文学部卒。
某洋酒会社が刊行している「世界のワインカタログ」編集長。
86年に就任して以来、世界中の醸造所めぐりをし、
年間2000種類以上のワインを飲みまくる。
著書に「今日からちょっとワイン通」「バラに守られたワイン畑」(共に草思社)
「現代ワインの挑戦者たち」(新潮社)他がある。
辻調おいしいネット「コラム&レシピ」内の
『今日は何飲む?』というコラムにて、
「今日は何飲む?」野次馬隊リーダーとして参加。

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