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コラム&レシピ
セパージュを飲む
vol.6 ソーヴィニヨン・ブラン(前編)

 森の若葉や柑橘類を思わせる個性的な香りと、爽やかでキレのいい酸味を特徴とする品種。シャルドネ、リースリングと並び、白ワイン用の三大葡萄のひとつに数えられている。
 最も有名な産地は、ロワール川上流のサンセールとプイィ・フュメである。
 1970年代までは、「ソーヴィニヨン・ブラン」と言えば、イコール「サンセール&プイィ・フュメ」だったといっても過言ではない。
 フランスの中でも、かなり北方に位置する産地ならではの、ライムやレモンを思わせる爽やかな香りと、キリリと引き締まった酸味、そして石灰と珪石が入りまじった大地に由来する「火打石」のように硬質な香りは実に魅力的で、また小樽熟成されることも滅多になかったため、品種の個性を純粋にテイスティングするには、まさに打ってつけだったのだ。
 もちろん、当時としても、品種解説的には、ボルドー地方を忘れるわけにはいかなかった。なんといっても、この品種の原産地と目されているのである。
 しかし、ご存知のように、ボルドーでは赤・白ともに「単独品種」のワインがつくられることはめったにない。ソーヴィニヨン・ブランも、通常セミヨンやミュスカデルなどと混醸されるため、品種の個性の典型としてテイスティングに使うのには適していなかったのである。
 その状況を一変させたのが、1971年にカリフォルニアのロバート・モンダヴィが「フュメ・ブラン」という名前で発売した67年もののソーヴィニヨン・ブランだった。本家プイィ・フュメに敬意を表した名前をつけつつも、本家とは違って小樽で熟成されたその白ワインは、ほとんど一夜にして大成功を勝ち取った。その結果、67年以前には、わずか300ヘクタールにも満たなかったカリフォルニアにおける総植付け面積が、94年には5000ヘクタールにせまるまでに増えている。(なお、現在カリフォルニアの多くの生産者は、樽熟したものを「フュメ・ブラン」の名で、樽熟しないものを「ソーヴィニヨン・ブラン」の名でリリースする傾向がある)。
 そして、この成功は南米やオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどに飛び火し、さらには、イタリア北部や南仏でソーヴィニヨン・ブラン・ブームを巻き起こし、今や、本家ボルドーでさえ、ソーヴィニヨン・ブラン単独のワインをつくるまでになっている。
 中でも、90年代に巻き起こったニュージーランドの大成功はセンセーショナルだった。
 きっかけは、85年に設立されたばかりの「クラウディ・ベイ」という醸造元がリリースした見事なソーヴィニヨン・ブランだった。そのワインは、典型的なサンセールの特徴をそのまま残しつつ、香りは何層倍にも凝縮されており、口いっぱいにはじけるみずみずしい果実味ときたら、ほとんど感動的なまでに鮮烈だった。
 この1本のワインが、文字通り、ニュージーランド・ワインの歴史を塗り替えてしまい、その後、この国はフレッシュな魅力あふれる白ワインの新たなセンターとして世界のワイン地図に記されるまでに成長し、そればかりか、立派な赤ワイン産地としても新たな歴史を歩み始めることになるのである。
 もちろん、日本でもこの品種は(量的には、まだわずかとはいえ)栽培され、徐々にではあるものの、なかなかの名品を生み出し始めている。
 この品種に特徴的な柑橘系の香りは、寒い産地から暖かい産地になるにつれ、ライム→レモン→オレンジとゆるやかに変化していき、それとともに酸の印象も次第に柔らかく優しくなっていく傾向がある。
 香りのもうひとつの特徴である青草のニュアンスは、葡萄の完熟度と、房そのものに太陽の光があたるかどうかで、大きく変化する。未熟な葡萄や、収穫量が多すぎる畑の葡萄、あるいは完全な日陰に実った葡萄の場合には、それこそピーマンを思わせるような青臭さが強烈に香る。
 しかし、その青さは葡萄が熟すにつれて柔らかくなり、燦々とした太陽を浴びた完熟果の場合には全く姿を消してしまうこともある。ただし、このニュアンスが完全に消え、オレンジ様の甘い香りだけが漂うようになってしまうと、残念ながらつまらないワインに落ちぶれてしまいがちである。そのあたりのバランスが難しい品種なのだ。
サンセール(ドメーヌ・ラ・プーシー)

サンセールとプイィ・フュメはロワール河をはさんだ対岸に位置しており、その味わいは双子のようによく似ている。プイィ・フュメのほうが多少コクがある、というような評もあるが、それは多分「生産者」の違いであって「産地」の差ではない。ただし、プイィ・フュメが平地に位置するのに対して、サンセールはお椀を伏せたような丘に位置する産地のため、丘の南斜面と北斜面ではかなり品質に差が生じる。南の方が充実していることは、言うまでもないだろう。プーシーの畑は日照に恵まれており、充実した果実味と、爽やかなキレ味を楽しめる。
シャトー・セント・ジーン フュメ・ブラン

セント・ジーンは1973年に、カリフォルニア州ソノマ地区に創設されたワイナリーで、言うまでもなく、ロバート・モンダヴィの影響を強く受けている。このワインは、3分の1を小樽発酵、残りの3分の2をステンレスタンクでスッキリと仕上げてブレンドする方法で独自性を出しており、一言で言って、とても飲みやすい味わいに仕上がっている。個性際立つワインとは言えないが、幅広い料理と楽しもうとするならば、こういう仕立て方もあるのかもしれない。
クラウディ・ベイ ソーヴィニヨン・ブラン

イギリスのワイン評論家ヒュー・ジョンソンをして「ソーヴィニヨン・ブランの新しい典型の誕生だ」と言わしめたのが、このワイン。その後、続々と優れたソーヴィニヨン・ブランが誕生し、いまではニュージーランドの人々は、世界のソーヴィニヨン・ブランのセンターはフランスではなくニュージーランドだと主張するまでになっている。果実のみずみずしさをなによりも大切にしているため、樽香はほんのわずか。ただ、最近になって、多少凝縮味にかげりが生じているような気がするのは、単なる気のせいなのだろうか。  


山田 健(やまだ たけし)
1955年生まれ。78年東京大学文学部卒。
某洋酒会社が刊行している「世界のワインカタログ」編集長。
86年に就任して以来、世界中の醸造所めぐりをし、
年間2000種類以上のワインを飲みまくる。
著書に「今日からちょっとワイン通」「バラに守られたワイン畑」(共に草思社)
「現代ワインの挑戦者たち」(新潮社)他がある。
辻調おいしいネット「コラム&レシピ」内の
『今日は何飲む?』というコラムにて、
「今日は何飲む?」野次馬隊リーダーとして参加。

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