辻調グループ校　コンピトゥム　Compitum

気軽に、魚介料理と楽しみたいときにおすすめ
ミュスカデ

　レモンを思わせる柑橘系の香りと爽やかな酸味が特長のワインを生む葡萄。魚介料理との相性はとてもいい。
もともとムロン・ド・ブルゴーニュと呼ばれていたことでも分かるように、本来はブルゴーニュ原産の葡萄だが、現在ふるさとでは一切栽培されておらず、もっぱらロワール河の河口に広がるミュスカデ地区でのみ栽培されている。
　タンクあるいは大樽で発酵され、発酵後も酸化を防ぐためにオリ引きをせず、酵母を沈めたまま置いておく「シュール・リー」という製法でつくられることがおおく、その場合には、わずかに炭酸をふくんだフレッシュな風味を楽しめる。
ミュスカデ地区は、大きく「ミュスカデ」と「ミュスカデ・ド・セーブル・エ・メーヌ」の二つに分けられる。後者は、ロワール河の支流にあたるセーブル河とメーヌ河の両流域産という意味で、しばしばこちらが上級の産地だと解説されているが、実際にはセーブル・エ・メーヌの方が圧倒的に生産量も多く、むしろこちらが標準で、単なる「ミュスカデ」の方が格下だと考えたほうが実状に近い。実際、単なる「ミュスカデ」には、推奨したいワインはあまりない。
　どんなに高くても2000円程度のものなので、せっかくなら、「セーブル・エ・メーヌ」のものを選びたい。


		●ミュスカデ・ド・セーブル・エ・メーヌ　マスター・ド・ドナシャン　ドナシャン・バユオー社　ロワール地方ミュスカデ・ド・セーブル・エ・メーヌＡＣドナシャン・バユオー社は、この地方で初めてミュスカデ種のブドウが栽培されたシャトー・ド・ラ・カスミシェールの所有者であり、現在もミュスカデワインの輸出ナンバー･ワンの地位を守っている。「マスター・ド・ドナシャン」は、同社のフラッグシップで、毎年、国際的に評価の高いエキスパートたちが選び抜いた優良ワインを、同社が瓶詰め販売しているもの。つまり、ミュスカデの典型的な味わいだという「保証付」ワインだと言っていい。

		●ミュスカデ・ド・セーブル・エ・メーヌ　エクスプレッション・ドルトグネス　ドメーヌ・ド・レキュ　ロワール地方ミュスカデ・ド・セーブル・エ・メーヌＡＣこの醸造元のオーナー、ギィ・ボサール氏は、究極の有機栽培といわれる「ビオ・ディナミ」の先駆者のひとり。大地の個性を大切にするためにビオを始めたという信念に従って、自社畑を土質によってオルトグネス（正片麻岩）、グネス（片麻岩）、グラニト（花崗岩）の三つに分け、それぞれの土質を表示したワインをつくっている。しっかりとしたミネラル、驚くほどに凝縮された柑橘系の香り、そして爽やかな酸味はみごと。まさに「ミュスカデの常識を超えたミュスカデ」である。

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文
山田　健（やまだ　たけし）
1955年生まれ。78年東京大学文学部卒。
某洋酒会社が刊行している「世界のワインカタログ」編集長。
86年に就任して以来、世界中の醸造所めぐりをし、
年間2000種類以上のワインを飲みまくる。
著書に「今日からちょっとワイン通」「バラに守られたワイン畑」（共に草思社）
「現代ワインの挑戦者たち」（新潮社）他がある。
辻調おいしいネット「コラム＆レシピ」内の『今日は何飲む？』というコラムにて、
「今日は何飲む？」野次馬隊リーダーとして参加。

コンピトゥムも協力しました

定価3,990円
監修：
辻調理師専門学校＆山田　健
講談社刊
11月下旬発売予定

■Vol.1「シャルドネ種」前編
■Vol.1「シャルドネ種」後編
■Vol.2「カベルネ・ソーヴィニヨン種」前編
■Vol.2「カベルネ・ソーヴィニヨン種」後編
 ■Vol.3「ピノ・ノワール種」前編
■Vol.3「ピノ・ノワール種」後編
■Vol.4「メルロ種」前編
■Vol.4「メルロ種」後編
■Vol.5「リースリング」前編
■Vol.5「リースリング」後編
■Vol.6「ソーヴィニヨン･ブラン」前編
■Vol.6「ソーヴィニヨン･ブラン」後編
■Vol.7「シラー」前編
■Vol.7「シラー」後編
■Vol.8「サンジョヴェーゼ」前編
■Vol.8「サンジョヴェーゼ」後編
■Vol.9「甲州」前編
■Vol.9「甲州」後編
■Vol.10「カベルネ・フラン」
■Vol.11「ガメ」
■Vol.12「マルベック」
■Vol.13「マスカット」
■Vol.14「マスカット・ベーリーＡ」
■Vol.15「ジンファンデル」
■Vol.16「ネッビオーロ」
■Vol.17「ゲヴュルツトラミナー」
■Vol.18「シュナン・ブラン」
■Vol.19「テンプラニーヨ＝ティンタ・ロリス（葡）」
■Vol.20「セミヨン/ミュスカデ」
■Vol.21「ピノ･グリ（ピノ･グリージョ）/トレッビアーノ（ユニ・ブラン）」
■Vol.22「ミュラー・トゥルガウ/グリューナー・フェルトリーナー」
■Vol.23「その他の赤ワイン用葡萄品種」
■Vol.24「その他の白ワイン用葡萄品種」

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