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 皆さんがご存知のように私はレストランの娘として生まれ、調理場で育ったと言っても過言ではありません。私の前には常に父の背中がありました。

 
  シェフズインタヴュー、
辻芳樹校長先生挨拶
 でも、成長するにしたがって、私の中で「料理とはちがう道に進みたい」という欲求が生まれ育ってきました。ある時期は「料理の道にだけは進みたくない」という強い拒否反応さえ持ったことさえあります。マネージメントを学んだ後、パリでしばらく仕事をしていましたが、常に自分の中に何か欠落感のようなものを感じていました。あるとき、それは自分がそれまで避けていたレストランへの郷愁、家族のもとで生活したい欲求だとわかり、すぐに地元に戻り、家業を継ぐことを決めたのです。ちょうどその時、悲劇的なことに父が亡くなりました。父の元に帰り、父から学びたいと思っていた私にとってその衝撃は強烈なものでした。またその後の二つ星への降格も、父の意思を継ごうと決めた私にとって大きな試練でした。ミシュランの評価の降格で、経営難に陥った店もあるほどですから。幸い私どもの顧客の方々は店に通い続けてくれました。それで私は勇気を得ることができ、逆にエネルギーにすることができたと思っています。
 現在、店のマネージメントをとり仕切っている夫と結婚し、一児の母になってからはさらに強くなれましたし。気持ちのバランスもよくなり、料理への集中度も増したと思います。結婚し、母になることは料理のプラスにこそなれ、決してマイナスになるものではありません。

 スタッフとのコミュニケーションは言葉でというより、共に料理を作り上げていくという作業の中で行われています。ですからミーティングもそれほど行いません。怒鳴り声もなく静かな厨房ですよ(笑)。私の店のスタッフはまず何よりレストラン<ピック>で提供している料理を愛しているし、私の味覚との共通点があるということが必須条件とも言えるのはまさにこの点です。
参加者からもたくさん質問が
 もちろん父の時代からのメニューは変えていきました。変化するというのは私自身の動機付けなんです。創作こそが料理を作ることの醍醐味だと思っています。食材に関しても私にとっては「この食材はOKだけれど、これは用いることができない」という風な組み合わせはありません。大切なことは風味のバランスです。盛り付けも変化してきましたね。祖父の時代にはお客様の目の前で、大きな肉の塊を切り分けていました。父の時代に厨房で皿盛りにするスタイルが定着しました。そして、今は真っ白の皿を用いたり、日本料理や、その他のアジア料理などからインスピレーションを得ていることもあります。でも、この盛り付けもやはりバランスが大切なんです。

 将来、料理、あるいは製菓の世界に進もうとする若い方々に言えるのは「基本」はしっかりと学ぶこと。創造はそこから広がっていく、ということです。
 
  興味深い話がたくさん
 確かにフランス料理は生まれてからずっと変化、そして、進化し続けてきました。でも、基本部分は変わっていないと思います。ただ、既成枠に捉われていないブラス氏やヴェイラ氏が登場してきて、マインドがずいぶんとオープンになったように思います。もちろん一般的な世代論で話すことはできないと思いますが、彼らのような新しい風は刺激になったことは事実です。

 フランス国内において、いや、ある意味世界中に<エル・ブリ>を始めとする新たなスペイン料理の風が吹いていました。もちろんフランス料理も影響を受けています。でも、今はずいぶんと落ち着いてきて、フランス料理が盛り返してきていると思います。忘れてはいけないのは<エル・ブリ>のフェラン・アドリア氏の食感に関する刺激的な挑戦は世界中の料理の世界に影響を与えたということです。これも彼らが何の枠にも捉われず、マインドをオープンにしていた結果だと考えています。
 
 フランス料理とは?むずかしいですね。自国の料理のことをもっとも優れていると思うのはどの国の料理人も同じでしょう。確実に言えるのはフランス料理はとても多様性に富んだ料理であるということです。そういった意味でほんとうにリッチな料理だと私は考えています。
 
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